腸は大切な器官 前回のコラムの最後に「低体温や冷え性の対策として、腱引き療法では腸もみを行っている」と書きました。 その中で個人的に腸もみが効果的であると考える理由を二つ書いたのですがみなさんは覚えていますか? もう一度書くと、 一つは腸を刺激することにより、腸の活動が活発になるということ。 二つ目は自律神経と腸の関係です。 では、腸の活動が活発になることにより何が変わるのか? 副交感神経に働きかけることで何が変わるのか? 今回はその辺りについて書いてみたいと思います。 動くということが大切 腸の活動で真っ先に思いつくのはなんでしょか? 食物の消化と吸収? それとも排便? 消化と吸収ということなら前回書いた産熱の種類の中に「食事誘発性産熱反応」がありましたよね。 なるほど。では腸もみによって食事しなくても消化活動が起こり、産熱されるのかというと……もちろんそんな訳はありません。 では排便は? 排便は腸が蠕動運動を行うことによって起こります。運動を行うとうことは、エネルギーを消費し熱が生まれるということです。便秘だとこれがない状態ということです。 では腸もみによって便秘が解消されて腸が動くことで産熱が行われるのかというと……少し違います。 確かに腸もみは便秘にも効果はありますが、まずなによりも腸揉みを行うと腸が刺激により活動を始めるということです。 便秘の解消は結果であって、腸が刺激により活動を始めるというのが先。 大事なのはこの〝活動を始める〟ということ。腸が活動するには当然エネルギーが必要になります。 そしてエネルギーを消費することによって熱が生まれているのです。 このエネルギーの消費のことを代謝と言います。 逆に言えば、十分活動できていない腸は熱を生み出さないということになります。 人間には核心温度(深部温度)というのがあり、脳や臓器など重要な器官を一定の体温に保つようになっています。 表面ではなく体の中心を優先して温めるようになっているのです。 直腸は37.0~37.5℃に保つようにでいています。ミステリやサスペンスドラマで監察医が検死の際に直腸温を調べていることがあると思います。 この直腸温は生命活動の喪失によって時間と共に下がってきます。直腸温の下がり具合が死亡推定時刻を推理する目安になるわけですね。 その核心温度を一定に保つために役立っているのが血流です。動脈によって送られた熱は深部の静脈と熱交換を行い、もしくは体表の静脈と熱交換を行い体全体を温めます。 このとき腸が冷たければ、より多くの熱を腸に与えて温めることになります。ここでも熱交換がおこるわけですね。 腸がしっかり活動していれば与える熱はより少なくて済み、体の他の部分へ回す熱が増えるということになります。 体の末端にまで十分な熱を持った血液が巡りやすくなるわけです。すると体全体の基礎体温も上がってきます。 ちなみに内臓で産熱量が一番多いのは肝臓になります。肝臓には多くの役割があり、常に活動をしています。 一つ一つの活動で生み出す熱量はそこまで大きくないのですが、トータルで考えると実に全体の20%ちかくの発熱量を誇ります。 これがいわゆる「非ふるえ産熱」になります。 交感神経は血管を収縮し、副交感神経は血管を広げる 次に自律神経と腸の関係ですが、まず自律神経には交感神経と副交感神経があります。そして消化器系は副交感神経によってコントロールされています。 ということは腸は副交感神経によって動いており、腸を調整することで副交感神経に働きかけることができるということです。 また、よく言われる自律神経の乱れというのはこの交感神経と副交感神経のバランスが崩れることで起こります。 ストレスなどで交感神経が強く働いていると血管は収縮状態になります。それが長く続くと末端への血流が阻害されます。 これは血液が十分な熱を手足(末端)に運んでくれないことを意味します。 逆に副交感神経が強く働くと、血管は拡張します。そうなると表層の静脈との熱交換で多くの熱が受け渡されることになります。 この状態が長く続くと体温はどんどん放熱されていきます。さらには血管の拡張により血圧も低くなるために、血液を循環させにくくなるので、交感神経の働きが強い場合とは逆の意味で血液が十分な熱を手足(末端)に運んでくれません。 これってどちらの場合も、いわゆる冷え性の状態だと思いませんか? ちなみに体温の管理というのは脳によって行われます。脳の視床下部にある体温調節中枢がそれです。 この体温調節中枢が体温を一定に保つための指令を出しているわけです。そして体温調節中枢も自律神経系に属しています。 自律神経のバランスが崩れれば、体温の調整も上手くいかなくなります。 ですから腸もみによって腸を活動させることにより副交感神経を刺激し、交感神経と副交感神経のバランスがとれるよう体を導くのです。 では働きの鈍った腸へのアプローチはどのようにすれば良いのか? それは次回に。 筆者プロフィール 河野 伸幸 筋整流法 専門指導施術師 筋整流法 東広島道場 道場主 350年続く武術流派の活法であった〝腱引き〟。その腱引きの技を元に現代に合うよう改良されたのが『腱引き療法』になります。 お店の名前が道場となっていますが、これは武術の活法が起源であること。また一方的に施術するだけでなく共に学び合う場所、という意味が込められています。 どこに行ってもダメと諦める前に、腱引き受けに来てみんさい!
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筆者プロフィール
河野 伸幸
筋整流法 専門指導施術師
筋整流法 東広島道場 道場主
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