女性特有の「うつ」を治すために知っておきたいこと
女性の「うつ」の原因は男性にくらべて複雑です。 社会的にも家庭内においても、女性に求められている立場は、いつの時代でも非常にデリケートであるにもかかわらず、周囲からは「強さ」と「不変」を求められるケースによく出会います。 女性の「うつ」の原因と治癒への道について、これまで当院で拝見してきたケースも含めてまとめてみました。 「うつ」と薬 「うつ」は「こころの風邪」とも言われるように、誰しもがかかる可能性の高いこころの病気です。 「うつ」は「うつ病」と「抑うつ状態」とに分類されますが、厳密な診断名は医師にしか下すことができません。 と同時に、「うつ」に対する薬の処方も、当然医師によって行われます。 処方される薬は「うつ病」であっても「抑うつ状態」であっても、最初は似たような処方になることが多いものです。 これは診断名や疾患の細かな分類以上に、「うつ」の状態であるために「日常生活に支障をきたしている」という点を重視し、現在の症状を緩和させることを目的に投薬されるためです。 精神科や心療内科などで処方される薬の大部分は、基本的に「対症療法」としての作用しか持っていません。 「うつ」になっている状態を根本から治療する薬はありません。 脳科学の発達により、大脳の神経の情報伝達の異常が「うつ」の原因であることが分かってきましたが、神経伝達を直接すぐに改善させて「うつ」を治療する薬はまだ開発されていません。 「うつ」になりやすい方の生活環境 「うつ病」あるいは「抑うつ状態」と診断され、医療機関から処方された薬を飲むだけでは「うつ」は治りません。 先に「『うつ』は大脳の神経伝達の異常」と書きました。 それを改善するために服薬されながら、伝達異常を起こしている神経の主であるご本人が、過労やストレスが充満する中で生活され続ければ、たとえきちんと服薬されていたとしても改善は難しいでしょう。 「休息は回復であり、何もしないことではない」という言葉があります。 休息や睡眠をとることはもちろん、味や香りを楽しみ、身体や気分から緊張を取り除いたときののびのびとした快適さ、深く長く呼吸できること・・・などは、まじめで手を抜くことのできない性格の方(=「うつ」になりやすい方)にとって、つい日常の中で後回しにしてしまいがちなようです。 女性特有の「うつ」の環境要因 当院では、男性以上にストイックさや滅私奉公を強いられてこられたり、あるいは自ら進んで孤独でハードな生活を送ってこられている女性をよく診させていただいています。 女性は生まれたときから「娘」や「孫」、ごきょうだいのいらっしゃるときは「妹」という家庭内での“役割”を担わされています。 ご自分の下にごきょうだいが生まれると、新たに「姉」という“役割”が増えることになります。 大人になってパートナーと出会われると、「妻」や「嫁」となり、やがて「母」という“役割”を背負ったとしましょう。 「妻」と「母」は、その“役割”が人生の中でも長い間続きます。 仕事や家事、育児と、現在でもまだまだ女性は社会生活と家庭内の双方において、身を削る思いをされながら“役割”を果たされています。 さらにお辛いのは、社会と家庭に適応しようとされればされるほど、周囲からはねぎらわれず、かえって過剰な期待しか返ってこない・・・というお話もよく伺います。 “役割”からの解放 この“役割”から解放されること、そして「自分を解放してあげよう」と自ら願うこと──女性の「うつ」は「それぞれの“役割”からの解放」にこそ真の治癒の道があるといえるでしょう。 当院で拝見している多くの「うつ」の患者様の場合も、長く耐え続けられ、孤立し続けられ、あるいは周囲から我慢を強いられてこられた、お一人おひとりの深いエピソードをお持ちです。 その多くの方は、「うつ」という漠然とした気分の落ち込みや不安感でいっぱいなのですが、その根底には「強い緊張感」があります。 寝ても眠れず、眠ったと思っても疲れがとれず、朝がつらくなり、食事もおいしくなく、すべての物事に興味がわかず、生きていることへの罪悪感すら覚える・・・といった感覚や気分は、神経と身体が異常に緊張しているために起こってきます。 まじめに生活されてこられ、ずるいことができず、“役割”に忠実な方は、「うつ」になっても適切な休養ができず、緊張されたままの状態が続いています。 最後に でも大丈夫です! 味方は必ずいます。 まずはちょっとだけ勇気を出して行動してみましょう。 心から信頼できる医療従事者や施術者にありのままの不調を話してみてください。 あなたは試されているのではありません。 あなたにふさわしい相手かどうか、あなた自身が試すのです。 人は人によって傷つけられますが、人によって癒されます。 あなたに素敵な癒しの出会いがありますように・・・。 筆者プロフィール 加藤 水男 聖母治療院院長 東洋鍼灸専門学校、東京医療専門学校 鍼灸マッサージ教員養成科を卒業。 専門学校の講師を勤める傍ら、1998年往診専門の漢方紫禁堂治療院を開院。 皇族方への鍼灸マッサージ治療・心理カウンセリングを行う。 鍼灸マッサージ治療と並行しながら、心理カウンセラー・一般社団法人日本TFT協会認定セラピストとしてメンタルケアに従事。 2015年聖母治療院と改称し、現在に至る。
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