片頭痛の原因となるのはセロトニン？【鍼灸師による頭痛解説シリーズ vol.03】

片頭痛発作にセロトニンが関係する 脳内で作られるセロトニンには、さまざまな働きがあります。 セロトニンは人の心の状態を左右するとされています。 大きくは以下のような5つの働きがあるとされています。 １．大脳皮質と呼ばれる、大脳に広がる薄い層に作用して、脳を最適な活動状態にする ２．心のバランスを整える ３．自律神経のバランスを整える ４．姿勢に作用する筋肉の働きを良くする ５．痛みを調整する この５つの働きを見れば、セロトニンは体にとってとてもいい作用ばかりに見えますが、このセロトニン、実は増えることで、片頭痛発作を起こすという説があります。 このセロトニンと片頭痛の関係については、1960年代から注目されていたようです。 では、なぜセロトニンが片頭痛発作を引き起こすのでしょうか？ 大量のセロトニンが血管収縮を引き起こし片頭痛の前兆が起こる セロトニンは、最初に何らかの刺激があり、脳内の血液中の血小板というところから放出されます。 この放出されたセロトニンが、他の血小板を刺激し、新たにセロトニンが放出されるという連鎖反応が起こります。 この連鎖反応により、脳内の血液中にセロトニンが大量に増えます。 この時に、大量のセロトニンが血管収縮を引き起こし、片頭痛の前兆が起こるのではないか、とされています。 これは、セロトニンが強力な血管を収縮させる物質だから起きる状態です。 体にいいものも、大量に存在すると有害になる 人の身体では、大量に生じたホルモンや神経物質は、消化されたり、再吸収されたり、体外に放出されたりします。 身体に取って良いものであっても、大量に存在すると有害になるからです。 大量に放出されたセロトニンも同様で、しばらくしますと、代謝され、尿の中に排泄されます。 このことにより、脳内では、相対的に血液中のセロトニン量が減少します。 このセロトニンの急激な減少が、血管を拡張させ、拍動性の頭痛を引き起こします。 セロトニンが血管を収縮させる働きがありますので、減少することにより、逆に血管を拡張させるわけです。 セロトニンを受け取る物質が片頭痛発作に関係している また、現在のところ片頭痛発作の原因としてもっとも有力な三叉神経血管説があります。 三叉神経終末において炎症が起こることにより、片頭痛になるという説です。 この三叉神経の終末の炎症により、セロトニンが放出されるようです。 このようにセロトニンが片頭痛発作に関わりがあるという説があります。 しかしながら、直接的に関わっているかどうかは、よく分からないというのが、最近の説です。 なかなか、明快に示すデーターが取れないからのようです。 ただ、片頭痛に効く薬であるトリプタンが、セロトニンを受け取る物質に作用していることは間違いがないようです。 これらのことにより、片頭痛発作にセロトニン自体が関与しているかどうかは不明ですが、セロトニンを受け取る物質が関係していることは、間違いがないことは、はっきりしています。 片頭痛発作時に脳の血流はどのようになっているのか？ 片頭痛発作時に脳の血流量の変化は、前兆ある片頭痛とそうでない片頭痛で、異なるようです。 片頭痛の前兆は、脳のある部分の血流が低下するのと一緒に、片頭痛が起こることが分かっています。 これらのことから、前兆ある片頭痛では、脳の血管拡張が、頭痛を引き起こすとは考えられていません。 前兆ない片頭痛では、脳血流が低下する場合や、増加する場合が、検査により観察されています。 現状では、どのように脳の血流が変化するのかは、意見が分かれているようです。 その現象は、皮質拡延性抑制と呼ばれています。 脳のある部分の血流が低下し、血液の流れが悪くなる場所がだんだんと広がる過程で、前兆が起きるのではないかと考えられています。 このように、なぜ、片頭痛になるのかは、よく分かっていないといえます。 なぜ、鍼灸治療が片頭痛に効果があるのでしょうか？ 鍼刺激により、脳血流量が変化することは、さまざまな臨床試験で、分かっています。 そして、鍼刺激の特徴としまして、血流量が少ない場合は多く、多い場合は少なく調整し、適切な量にするという働きがあります。 これを鍼灸の2面性と呼んでいます。 この鍼による作用は、脳血流量だけでなく、自律神経や免疫作用にも、同様に働きかけることができます。 現状では、脳血流量の変化が、片頭痛発作に関わっていることは、はっきりとしています。 ただ、増えてなるのか、減ってなるのかが、よく分かっていません。 鍼治療が片頭痛に効果があるのは、脳血流が増えている場合、減っている場合のどちらにも作用でき、適切な量に持っていけるからと考えられています。 筆者プロフィール 夘野　裕樹 鍼灸院 天空院長（ポラリス株式会社　代表）資格：鍼灸師 所属学会：全日本鍼灸学会（認定鍼灸師）/日本線維筋痛症学会 鍼灸師になり３０年以上が経ちました。 ２０代で一度、開業しましたが、阪神淡路大震災で閉院しました。 その後、整形外科や整骨院に勤務していました。 あなたが思っている以上に鍼灸はいろいろな病気に効果があります。 この鍼灸の良さをもっと広く社会に知ってもらいたいと思い、改めて、鍼灸専門の治療院を開業しました。 毎日、鍼灸治療と後進の育成に励んでいます。