最近、生理痛などではなく、生理前になると身体の不調を訴える女性が増えてきています。 この状態をPMS(月経前症候群)と呼んでいます。 名前だけが独り歩きしている感じがありますので、正しい知識を得ていただければと思います。 PMS(月経前症候群)とは? PMS(月経前症候群)とは、排卵後、基礎体温が高くなる「黄体期」から生理開始後4日までに生じるさまざまな精神症状や身体症状のことをいいます。生理開始4日以内にその症状が軽くなる、あるいは、消えるという特徴があります。 より重症で、精神症状が主になる場合は、PMDD(月経前気分不快症状)に分類されます。 日本人女性の20人に1人が悩むPMS 日本人の成人女性における有病率は以下のようになっています。 1.社会生活に支障が出る中等度以上のPMS→5.4% 2.PMD→1.2% ざっと、20人に一人は悩んでいる計算になり、意外に多くの女性がQOL(生活の質)を障害していることになります。 また、思春期の女性は、成人女性よりも多く発症しているという報告があります。 なぜ、PMSになるかは、現在のところ、不明とされています。 ただ、ホルモン剤を服用すると症状が軽減することから、以下のような成り立ちがあるのではと推定されています。 1.排卵直後から卵巣でつくられる女性ホルモンである黄体ホルモンが発症へ関与 2.脳内セロトニンにより黄体ホルモンへの感受性が亢進することにより発症する PMS(月経前症候群)の症状はどんなものか? PMSかどうかは、あなたの身体の状態をもとに診断されますが、通常の血液検査によるホルモン測定では、異常がないことが前提となります。 また、黄体ホルモンが誘因と考えられていますので、排卵が正常にある(卵巣機能が正常)ことが、より重要視されています。 いわゆる生理不順がなく、生理周期が一定であっても、生理前になると不快な症状や痛みが生じることあれば、PMSとします。 具体的には、アメリカの産婦人科学会がPMSの診断基準を出していますので、それをご紹介します。 あなたはPMS?チェックリストで確認してみよう! アメリカ産婦人科学会のPMS(月経前症候群)診断基準をご紹介したいと思います。 ○身体的症状 ・乳房痛 ・腹部膨満感(お腹の張り) ・頭痛 ・手足のむくみ ○精神的症状 ・抑うつ ・怒りの爆発 ・いらだち ・不安 ・混乱 ・社会からの引きこもり ①過去3ヶ月以上続けて、生理前5日間に上の症状のうち少なくとも一つがある ②生理開始後4日以内に症状がなくなり、13日目まで出ない ③お薬やアルコールを飲んだことによるものではない ④PMSの治療始めてからも3ヶ月間にわたり、症状が出た ⑤社会的または経済的能力にはっきりとした障害がある 上の①~⑤すべてにあてはまる場合をPMSとしています。 ⑤の社会的障害は難しい表現ですが、PMSにより、会社を休む、勤務時間中に退社するなどはその範疇に入ります。 経済的能力とはアメリカは日本と異なり、公的保険制度が充実しておりませんので、医療費が高額になり、適正な医療を受けられないことがあります。 この辺りのことを鑑みてのことと思います。もちろん、症状がひどくて会社を退職せざる得ない場合も、当然、含まれます。 PMSかどうかを判断するにあたり、大切なことは、生理後には症状が消失することです。 仮に生理後も何らかの精神症状が続く場合は、うつ病などの他の病気を考える必要があります。 もし、あなたがそうであれば、婦人科専門医より早めの心療内科専門医への受診が大切になります。 PMS予防に繋がる食事療法 PMS(月経前症候群)は女性ホルモンのバランスの崩れにより起こると考えられています。 そこで、急激な血糖値に変動を避けることが大切になります。 これは血糖値が上昇しますと、黄体ホルモンの量も増えるからです。 黄体ホルモンがPMS誘因であることは、はっきりとしていますので、適正な量に保つことはPMS予防に繋がります。 有効な対策は以下のようになっております。 1.炭水化物を積極的に摂る 2.砂糖、人工甘味料などを摂らないようにする 炭水化物は糖質なので、血糖値を上げるのではという疑問が出てくるかもしれません。 この場合、血糖値の上がりにくい低GI(グリセミック・インデックス)値の炭水化物となります。 例えば、玄米、ハト麦、全粒粉のパン、パスタ、ライ麦パンなどです。 また、脳内でセロトニンという神経伝達物質が増えますと、心の安定が図れPMS予防に繋がります。 ただ、セロトニンはトリプトファンというアミノ酸からつくられますので、このトリプトファンが体内に多く必要になります。 これは、体内で合成できないため、食品から摂るしかありません。 ‐トリプトファンを多く含む食品‐ ・乳製品→牛乳、チーズ、ヨーグルト ・大豆製品→豆腐、納豆、みそ ・魚類→カツオ、マグロ ・ナッツ類→アーモンド、ピーナッツ PMS改善に鍼灸治療がお勧め PMS(月経前症候群)は黄体ホルモンの分泌異常によるもので、これは女性ホルモンのバランスの崩れが主となっています。 鍼治療をすることにより、生理周期のフィートバック機構に刺激を与え、ホルモンバランスが正常化されることが分かっています。 また、子宮への血流量が増え、排卵痛などが改善されることもわかっています。 脳内の血流量も増え、脳内セロトニンが増えます。 これらの作用により、鍼刺激により女性ホルモンの安定化や精神的な落ち着きを取り戻せます。 そして、鍼灸治療を続けることにより、神経やホルモンの働きが正常になり、再発する可能性が低くなります。 このように鍼灸治療がPMSに効果がありますので、お薬に頼りたくないあなたにとって、鍼灸治療は選択肢の一つになるといえます。 まとめ いかがでしたでしょうか? 近年、PMS(月経前症候群)で悩む働く女性が増えてきています。統計によれば成人女性の20人に1人が悩んでいます。 男女雇用均等法などにより、深夜までの勤務が増える、社会全体として生産性を上げる必要などから、働く環境が厳しくなったことも、その要因にあるとされています。 主には黄体ホルモンと脳内セロトニンの働きの乱れにあります。 この働きを改善することにより、症状の改善が期待できます。 鍼灸治療はこのお手伝いができます。 筆者プロフィール 夘野 裕樹 鍼灸院 天空院長(ポラリス株式会社 代表)資格:鍼灸師 所属学会:全日本鍼灸学会(認定鍼灸師)/日本線維筋痛症学会 鍼灸師になり30年以上が経ちました。 20代で一度、開業しましたが、阪神淡路大震災で閉院しました。 その後、整形外科や整骨院に勤務していました。 あなたが思っている以上に鍼灸はいろいろな病気に効果があります。 この鍼灸の良さをもっと広く社会に知ってもらいたいと思い、改めて、鍼灸専門の治療院を開業しました。 毎日、鍼灸治療と後進の育成に励んでいます。
筆者プロフィール
夘野 裕樹
鍼灸院 天空院長(ポラリス株式会社 代表)
資格:鍼灸師
所属学会:全日本鍼灸学会(認定鍼灸師)/日本線維筋痛症学会
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