前回のコラムで、膝に水が溜まったら氷で冷やすのが有効という記事を書きました。意外に思われた方もいらっしゃったかもしれません。でも氷で冷やす、いわゆるアイシングは実は関節水腫以外にも多くの場面でその力を発揮してくれます。 アイシングが有効な症状 多くの場面で力を発揮してくれるアイシングですが、2つほど例に出して詳しく解説していきたいと思います。 1.捻挫 以前は傷めた直後は冷やして、2,3日経ったら温めるというやり方が一般的でした。 しかし、20年ほど前から一部の臨床家の間で痛みが完全に無くなるまで冷やしてしまった方が治りは早いと言われ始めました。 2.腰痛 ぎっくり腰など急性のものはもちろん、何年も付き合っている慢性腰痛もアイシングによって痛みが取れることはよくあります。 以前、まだ私が保険で患者さんを拝見していた頃、昼休憩の時間に往診を行っていました。 「さっき腰を傷めてしまって動けないので来てくれないか」 といったような要請が年に数件ありました。 そんな時私は氷を縦横20~30センチのビニール袋に半分くらい入れ、中の空気を吸い出して入り口を縛った簡易氷嚢を3~4個用意して患者さんのお宅に出かけたものです。 患者さん、もしくはそのご家族に簡易氷嚢の作り方をお教えして、持参したものが無くなっても徹底的に患部を冷やすことをご指導してその日は帰ります。 「動けるようになったら院の方にいらして下さい」 と言っておくと、大抵、1~2日後には 「だいぶ楽になりました」 と言ってお見えになりました。 院では骨盤の整復を行いますが、充分に冷却をしているのでその場で痛みが取れてしまうことが多かったです。 「こんなに早く治るとは思わなかった」と皆さん異口同音におっしゃいました。 腰は温める?冷やす? 今でこそ、アイシングは一般的になってきています。 特にスポーツをなさる方、スポーツ観戦がお好きな方には当たり前の治療法かも知れません。 高校の運動部では自前の製氷機を持っている所も少なくないほどです。 でも、20年前は全く一般的ではなく、「腰は温めるもの、絶対に冷やしてはならない」と思っている方も多く、幾多の抵抗にもあいました。 独立開業した当時、治療技術もまだまだだった私は治療に氷の力を借りようとお見えになった患者さんにはほぼ全員にベッドで強制的にアイシングを行っていました。 痛みが取れて感謝して頂ける方も多かったのですが、ある日の昼休み、近所のラーメン屋で食事をしていると、店の奥の方から客のおばあさんが二人大声でしゃべっている声が聞こえました。 「今度出来たそこの整骨院は絶対に行っちゃいけないよ!腰を15分も冷やすんだよ!」 「あらまぁ、腰は冷やしちゃいけないよ。それはいかない方がいいよ」 見ると、ひとりは確かにその前日に初診で見えた患者さんです。 昨日はにこにこしてお帰りになったのに・・・ 結構ショックな出来事でしたが、その後も特に年配のご婦人にはいろいろ悪口を言われることになりました。 さいごに 前回の繰り返しになりますが、人間は常に熱を発生させています。 一定の体温を保つために過剰な熱を排出することで対応しています。少し乱暴ですが、排出が滞ってしまった箇所が痛みの場所です。 アイシングで排出の手伝いをしてやることは理に適っていると思いませんか? アイシングを行う際に大切なのは必ず氷を使用するということです。それも冷凍庫から出したばかりのカチカチのものでなく、表面がうっすら融けかかっているもの使用します。 間違っても保冷剤などを使ってはいけません。火傷などの事故を起こすばかりか症状を悪化させる場合もあります。 指先など身体の先端部は過剰冷却に気を付けなければなりませんが、体幹部であればどこが痛くても迷わず長時間アイシングを行って構いません。それだけである程度取れてしまう痛みは本当に多いです。 筆者プロフィール 吉川良介 柔道整復師 吉川整体院長 昭和41年2月 東京生まれ 平成11年3月 「梅ヶ丘よしかわ整骨院」開院 平成17年8月 同院閉院 平成17年10月 東急世田谷線上町駅前にて「吉川整体」開院 現在、都内を中心に東北や、関西方面からも訪れて頂く患者さんの施術に忙しい日々 を送っている。
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筆者プロフィール
吉川良介
柔道整復師
吉川整体院長
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