急に見舞われるギックリ腰や長引く腰痛。痛い時には安静にするのが回復への近道と思っていませんか? 医療機関を受診した時にも「痛いうちは安静にして下さい」と言われることがあると思います。 怪我や病気が原因の痛みなら安静を必要としますが、腰痛に関しては急性腰痛、慢性腰痛とも動いて治すことが常識となってきています。 痛い時は安静?ストレッチ? 「ギックリ腰になったらサポーターを付けて安静」というのがこれまでの常識でした。 ですが欧米各国の腰痛ガイドラインの中では、急性腰痛の治療に関して「治療として安静臥床を指示してはならない」と勧告しています。 この内容は多くの研究によって分かってきた科学的根拠に基ずくものです。 このような研究報告があります。 ぎっくり腰の患者を対処にした研究報告 急性腰痛(ぎっくり腰)の患者186人を対象に、無作為に下記の3群に振り分けて調査を行いないました。 ⚫️2日間横になって安静にしてもらうグループ ⚫️ストレッチをしてもらうグループ ⚫️耐えられる範囲内で日常生活を続けてもらうグループ 3週間後、12週間後、どの時点でも、最も回復が早かったのは日常生活を続けたグループでした。 そして回復が遅かったのは2日間の安静臥床の人達です。 実は腰痛の研究をレビューした結果、安静によって何らかの利益が認められた研究は見あたりません。 慢性腰痛の悪循環 慢性腰痛では、不安や恐怖といった情動が痛みのとらえ方や考え方に影響を及ぼし、脳、神経の働きや生活に影響を与え痛みを長引かせていると考えられています。 痛みが長引くと、「痛いから〇〇できない」といったマイナスの考え方が先にたち自分でやれることが少なくなってきます。そうすると、1日中横になっていたり仕事を辞めてしまったりといった疼痛回避行動をとる事も増えるでしょうし、次第に外出することも避けるようになります。 このように動かさない期間が長くなるほど、「動かすと痛いから…」と動かすことへの恐怖心が増していきます。すると身体は衰え気分も落ち込んできて更に痛みが悪化していくという悪循環に陥ることになります。 「痛みはあるけど〇〇できた」といった前向きな考え方を心がけ物事のとらえ方を修正すれば、自分でやれることが増えてきて症状は次第に改善していくはずです。 全か無か思考 痛みが長引くと、物事のとらえ方や考え方にゆがみが出てくることがあります。物事に対して「白か黒か」「ゼロか100か」という両極端の考え方をしてしまうのが慢性痛患者の特徴の一つです。 たとえ痛みが減ってきていても、「まだ痛い」「以前とは違う」といったように悪いところにばかりに注目してしまうと、「全く改善していない」と自身で結論づけてしまうことになります。 すると「まだ痛いから〇〇できない」というマイナスの考えに戻ってしまい、痛みの悪循環が続くことになりかねません。 痛くてもできることからやってみて、小さな達成感を積み重ねていくことが大切なのです。 受け身の治療から自ら治す考えへ 自ら積極的に治そうというよりも、むしろ受身的な治療が役立つという考えを持つ人は特に予後が悪くなる傾向にあります。 病院や治療院での治療はあくまでも回復するためのきっかけで、最終的には自分自身の治癒力で治すしかありません。 特に慢性痛には運動が効果的とされていて、鎮痛効果や身体機能の改善が期待できます。 最初は痛くて動かせなくても、動かせる部位から運動させたり、5分、10分でも歩いてみることが大切です。 「痛みが出て5分しか歩けなかった」ではなく、「痛みが出たけど5分歩けた」といった前向きな考え方をもち運動を継続する事が、身体はもちろん脳のリハビリにも有効であると言えます。 さいごに 腰痛になると動いていいのか悪いのか迷ってしまいますが、安静で良い結果が得られたというデータはどこにもありません。また、活動を維持することが有害であるという根拠もないのです。 腰痛は有害なものである、動くと悪化するといった思い込みは認知のゆがみを作り出し、その信念や行動が症状を悪化させたり長引かせることがあるということを覚えておいて下さい。 筆者プロフィール 青葉 秀樹 あおふじ整骨院院長 柔道整復師 EFT-Japan プラクティショナー SAJ スキー準指導員 山形県遊佐町生まれ。あおふじ整骨院院長 脳、神経の働きに注目し、痛みや不調を繰り返さない激しい運動でも痛まない健康な体づくりをサポート。身体的問題にも感情が関係していることが多いことから、心と体の両面に目を向けた施術を行っている。
筆者プロフィール
青葉 秀樹
あおふじ整骨院院長
柔道整復師
EFT-Japan プラクティショナー
SAJ スキー準指導員
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