鍼灸治療は、症状に応じて適量な刺激を「鍼やお灸」で与えて効果を引き出します ある疾患や症状に対して鍼灸治療を行う場合、以下のような場所(治療点)を選び治療するパターンがあります。 この鍼やお灸を行う場所(治療点)の選び方は、 1.経絡・経穴現象の立場から選択 2.現代医学の学理にのっとって、選択 3.昔から伝えられている特効治療点(特効穴) 4.患部、及び症状の表れている箇所 5.その他 この様に、それぞれの症状に応じて特定の治療部位を選び、適量の刺激を与えて効果的な反応を起こす事が鍼灸治療を行うことによって可能となります。 それでは、なぜ鍼灸治療には効果があるのかを紐解いていきましょう! 現代医学的にみる鍼灸治療 人間の体には恒常性を保持する機能が備わっています。つまり、血糖値や血圧・体温などカラダの様々な環境や状態を、一定の状態に維持する機能があるのです。 しかし、身体的また精神的なストレスが過度に加わると、この恒常性保持機能がくずれてしまい、徐々に体の健康が損なわれていきます。 この時に体の表面から鍼やお灸で刺激を加えると、恒常性保持機能が調整されて動きが改善され、症状の改善や予防につながると言われています。 交感神経と副交感神経のバランスを整える 鍼灸治療で鍼を打ち、体に刺激を与えると、交感神経と副交感神経のバランスを整えることができるので、病気の予防につながります。 また、「内臓体壁反射」と呼ばれる反射の現象を利用して、鍼灸治療により内臓などの機能改善ができるという考え方もあります。 この反射の現象は、内臓をはじめとする組織に異常がある場合、神経のつながりがある筋肉や皮膚にそれが反射され、筋肉や皮膚に痛みやしびれをはじめとする様々な症状が出るというものです。 その現象を逆手にとり、鍼で体表に刺激を与えることにより、内臓にも影響を与えることができると考えられています。 鍼灸には痛みを止めたり、筋肉の緊張をおさえる働きがある 鍼やお灸で筋肉に刺激を与えることで、「反射作用」を使って筋肉の緊張をゆるめ、体に出ている痛みをおさえる事が出来ます。 また痛みを伝える「知覚神経」を体の表面からの刺激でシャットダウンすることで、痛みをおさえる鎮痛効果を生み出すことができると言われています。 さらに、鎮静作用のある脳内モルヒネ様物質の分泌を促すことで、鎮静作用が期待できます。 自律神経と免疫に作用する 鍼やお灸を使った体の表面からの適度な刺激は、自律神経系の一つである交感神経(体を活発に活動させる時に働く神経)の過度な緊張を抑えて、副交感神経(体を落ち着かせている時に強く働く神経)の働きを強めていくのです。 東洋医学的にみる鍼灸治療 写真:灸頭鍼にて施術している様子。古典で言うところのの火鍼の手技。 東洋医学の根本的な思想とは? あなたは東洋医学と西洋医学の違いについてご存知でしょうか? 現代の西洋医学は、人間のカラダを科学的にとらえて分析・細分化してとらえていくのに対し、東洋医学は人間のカラダをひとくくりの全体としてとらえて、大局的に体全体を総合的にとらえていくのです。 また、西洋医学では病気に関して個々の症状を一つずつ見ていきますが、東洋医学では体全体に出ている症状をひとまとめにして、全体として現れる症候群として見ていきます。(症状1つ1つに病名をつけて治療するというのではなく、症を立てて治療するという考え方) また、東洋医学の考え方の根底には、自然哲学的な思想があります。 自然哲学的な思想とは、どこかで聞いたことがある人もいると思うのですが、すべての事柄を「陰」と「陽」にわけて考える「陰陽論」であったり、宇宙の根源を木・火・土・金・水で表す「五行論」のことです。 東洋医学では、これらの思想を生理学や解剖学・臨床論に結びつけて使っているのです。 東洋医学・鍼灸治療の弱点とは? 東洋医学・鍼灸治療には自然哲学的な思想が根本にあるため、現代の西洋医学のように科学的にパターン化、数値化、データー化できないという弱点もあります。 体におこる様々な現象を、気・血、陰・陽、虚・実、の様な考え方を用いてとらえるため、科学的に何かを証明することが難しいのです。 東洋医学では、人間の体の状態を、臓器や皮膚の色、味、臭い、季節、声などにあてはめて、とらえることで、いま体に何が起きているのか?という状態や原因を探していきます。 これらは長年の経験に基づいて集大成されたもので、後から理屈を付けて理論化・体系化された一面も有ります。 効果があったのでこれはこういうことだったのかと後から考えて理論づけしたようなところも有ります。 気・血・経絡・経穴(ツボ)について考えよう! 「気・血(けつ)」は、体内をくまなく巡り、生体現象が成り立っているという考え方です。 現代医学におきかえると「気」というものは、神経やホルモン系作用にあたり、「血」というものは、血液、リンパ液、組織液、などの体液ととらえて説明することができます。 この「気・血」が巡る経路のことを「経絡」といい、この経絡の上に「経穴(ツボ)」が点在するという考え方です。 経穴(ツボ)は経絡の上にあり、気や血が流入したり流出する部位で、体に異常(疾病)が起こった場合にその反応が現れる場所なのです。 そこで、この経穴(ツボ)に対して鍼やお灸を使った刺激を与えて治療をすることで、有効に作用するわけです。 まとめ さて、いかがでしたでしょうか? 少し難しい内容にはなってしまいましたが、ひとくちに鍼灸治療と言っても、現代医学的な見方と東洋医学的な見方では、効果を出すための理論がまったく違うものになっているのです。 ぜひ鍼灸治療を受ける際の基礎知識として頭に入れておいてくださいね。 筆者プロフィール 杉山 祐介 経歴 都賀光明堂治療院 院長 千葉市鍼灸マッサージ師会副会長 千葉県鍼灸マッサージ協同組合監事 資格 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、介護支援専門員
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筆者プロフィール
杉山 祐介
経歴 都賀光明堂治療院 院長
千葉市鍼灸マッサージ師会副会長
千葉県鍼灸マッサージ協同組合監事
資格 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、介護支援専門員
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