人は常に情報のやりとりをしている。 前回「足(足の裏)の使い方ひとつで健康にも不健康にもなる」と書きました。 二本足で直立する人間にとって足の裏はすべての起点です。足の裏(足底)の接地によってその上に立つ下肢~頭部までの状態が変わってきます。 例えば急な坂道を登る際、人は重心を前に持ってくる(例えば前屈みになる)ことにより坂道から転げ落ちないようにします。逆に急な坂道を下る時は後ろに重心を持ってきて、同じく転がり落ちないようにします。 あるいは片脚立ちになった際、人は体重移動と上体の揺れを押さえるための筋肉の緊張を咄嗟に行い姿勢を制御します。 こういった姿勢制御には足底(足の裏)・骨盤・頚部に多く存在すると言われるセンサー(受容器)からの情報を元に脳(中枢神経)で処理されます。 姿勢に関する情報は視覚や前庭器官(平衡感覚を司る)からも得られるので、もちろんその情報も使います。 身体のたくさんのパーツが機能的に連結・連動している 上記のような外力による重心や重力の変化を感知し、そこから得た情報を処理して指令を行うのは神経系のシステムになります。 これに対し、実際の動きを司るのが筋肉系や骨格系のシステムです。 人間の骨の数は成人で206個(例外あり)と言われています。新生児だと300個以上あるそうです。 そして人間の筋肉は600個あると言われています。但しこれは心筋・骨格筋・平滑筋の3種類を合わせた数です。通常の動作で使う骨格筋はそのうちの400個。 ちなみに関節の数は265~365と説により幅があるのですが、関節には色々な種類があり分類の仕方によって変わるようです。 いずれにせよ、細かく分けていくと人間のパーツというものはたくさんの数があるのがわかりますね。 実はこのすべてが運動学的連鎖(キネマティックチェーン)によって、機能的に連結(もしくは連動)しているのです。 例えば骨格系の運動学的連鎖であれば、右足が内側に傾く(小指側に体重がかかる)ことによて脛骨は回旋します。すると膝関節を通じて大腿骨も回旋し、股関節を通じて骨盤は傾きながら回旋します。 さらに骨盤の傾きによって胸部は……といった形で頭部まで影響を与えます。 骨格は関節を介して、筋肉は力(筋肉が生み出す)を介して全体が連結・連動しているのです。 そういった意味でも接地の基準となる足の裏は、すべての起点になるのです。 足には3つのアーチがある。 ところで足にはアーチ構造があるのをご存じですか? 一番分かりやすいのは内側のアーチ。土踏まずがあるので見た目にもアーチになっているのがわかると思います。 次に分かりすいのが外側のアーチ。試しに足の裏に板を当ててみると、外側も接地しない部分があることに気づくと思います。見た目は内側よりも小さいですが、骨格でみれば外側も立派なアーチ構造を持っています。 この2つは縦のアーチで、中足骨前部(指のつけ根)から踵骨(かかと)までの長さのアーチを作ります。 おそらく一番分かりにくいのが足の前側にある横アーチです。これは2つの縦アーチの片端にあたる中足骨前部を結んだアーチ構造のことです。 この3つのアーチと足底腱膜と呼ばれる薄いけど強靱な腱があるおかげで地面に接地した時の衝撃を吸収してくれます。 足と各関節、腰、そして頭部への衝撃から身を守るためのクッションとなっているのです。 ちなみに縦アーチが崩れると扁平足。横アーチが崩れると開張足になります。 そしてアーチを形支えているのが足の各筋肉ですが、その中でも重要なのは中足骨に付着する骨間筋(背側骨間筋と底側骨間筋)と呼ばれる筋肉です。 トラス機構とウインドラス機構。 また、アーチの作用で重要な役割を示すのが足底腱膜です。 足に加重が掛かると足底腱膜が伸びることによりバネの役割をして衝撃を吸収します。これをトラス機構と呼びます。 足の指を背屈(つま先立ちなど)すると、足底腱膜が足先へと引っ張られ縦のアーチが挙上(高くなる)します。これがウインドラス機構。このウインドラス機構により挙上したアーチが元に戻ろうとする力がバネの役割を果たし、蹴り出しの推進力になります。 アーチを維持するためにも。 外反母趾に代表される足の障害のほとんどが、アーチ構造の破綻によって起こっていると言えます。 またアーチの破綻によりクッションやバネの役割がなくなり、歩きにくく疲れやすいといった症状も出てきます。のみならず、膝・股関節・腰・肩・頭……といった場所へも障害が広がっていきます。 このアーチを崩さないためにも、アーチの要となる骨間筋を鍛える必要があるのです。 骨間筋は主に横アーチの構成に関与していますが、その作用は足趾の屈曲(指のつけ根から曲げること)。つま先でしっかり着地して歩けば足趾を使おうとします。 不安定な場所であれば更に屈曲しようとします。それだけでも骨間筋は鍛えられます。 また走行においてもつま先着地を実践すれば、趾行による動物本来の走り方に近づき、ウインドラス機構による推進力の恩恵を十分に受けることができます。 疲れない体とは、筋肉が無用な緊張を起こさない体です。それは無理がないということです。そして無理がなければ人は自らの治癒力を使って健康を維持できます。 そのためにも足元から変えてみませんか? 次回は歩く以外の簡単な運動を紹介します。 筆者プロフィール 河野 伸幸 筋整流法 専門指導施術師 筋整流法 東広島道場 道場主 350年続く武術流派の活法であった〝腱引き〟。その腱引きの技を元に現代に合うよう改良されたのが『腱引き療法』になります。 お店の名前が道場となっていますが、これは武術の活法が起源であること。また一方的に施術するだけでなく共に学び合う場所、という意味が込められています。 どこに行ってもダメと諦める前に、腱引き受けに来てみんさい!
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筆者プロフィール
河野 伸幸
筋整流法 専門指導施術師
筋整流法 東広島道場 道場主
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