筋肉は使わないと衰える。 前回、足にある3つのアーチの話をしました。 その中でも骨間筋というのはアーチの維持に大切な筋肉であり、つま先着地で歩くことによって鍛えられるとも書きました。 人間の筋肉というのは約600個。任意に動かせる骨格筋は約400個あると言われています。しかしその400個すべてを効率的に使っているかというとそうでもありません。 生活の変化であったり、道具の発達であったり、そういった理由から一部の筋肉を使わなくなったりします。 足の骨間筋は靴という道具の発達によりあまり使われなくなりました。衝撃吸収性のよい素材の発明により、天然のクッションやバネといった機構を使わなくてもよくなったのです。そして踵着地で歩いてあるいてしまうと足へのダメージが大きいにもかかわらず、靴が踵を守ってくれるようになりました。 歩き方が変わってしまうと使う筋肉も違いが出てきます。本来は足を起点として体中の筋肉を連携させてバランスを保っていたのに、使われない筋肉が出ることにより他の筋肉の負担が大きくなります。 使われないということは、その筋肉は発達もしないということです。そして本来、その筋肉を使うことを前提にして構成されている体はどんどんバランスを崩してゆきます。 ごく当たり前の動作でも運動になる。 私はつま先着地の歩き方を推奨していますが、それは人間本来の歩き方であると考えるからです。 本来人間はつま先着地する蹠行であり、足の指を使う生き物です。手ほど器用ではなくとも地面を掴むように立ち、歩くことができるのです。 ですからぜひつま先着地で歩いていただきたいのですが、それ以外にも骨間筋を鍛える運動がいくつかあります。 どれも簡単ですので、補助的な運動としてやってみてください。その際は裸足でお願いします。 屈伸運動を行う 普通の屈伸です。注意点は膝を深く曲げた際に、踵を浮かせることです。 踵を浮かせることによってMP関節(足の指つけ根)をしっかり曲げて使います。 ちなみにスクワットは大腿四頭筋(太ももの前面の筋肉)に強い負荷をかけるために基本的に踵をつけて行いますので、目的が少し違ってきます。屈伸運動の替わりにスクワットをする場合は踵を上げて行ってください。 その場で足踏みを繰り返す 小学生のころ運動会の行進でやったことがあると思います。そう、あの足踏みです。 何も特別なことはありません。注意点はもも上げではなく、つま先(特に拇指丘側)で地面を蹴るつもりでしてみてください。 足踏みをすればつま先から必ず着地します。そして地面を蹴ることで足先を使う感覚を養います。 ごく希に足踏みでも踵から着く方がいらっしゃいますが、足先を浮かそうとしている場合が殆どです。その場合はつま先着地を意識してみてください。 その場でつま先立ちを繰り返す これも特に説明はいらないと思います。高い所のモノを取る時のように両足でつま先立ちを繰り返してみてください。 余裕があれば、つま先立ちした時に少しだけ前に傾きます。すると倒れそうになるので指を曲げて床を掴もうとすると思います。 これを繰り返すとふくらはぎの方も鍛えられます。 その場で軽いジャンプを繰り返す これも普通のジャンプです。大きく跳ぶ必要はありません。ラジオ体操でやるように跳んで貰えば良いと思います。 慣れてくると足の指を意識するといいでしょう。キーワードは〝指で地面を掴む〟 ただジャンプするだけでは物足りない方は、裸足で縄跳びをするのもいいと思います。 足でグーとパーを繰り替えず ギュと握り込むようにして力を込め、その後大きく開きます。余裕があれば足でじゃんけんをしてみるのもいいと思います。 テレビなどでタオルを足の指を使ってたぐり寄せるというのを見た人もいるかと思います。 グーとパーするだけでは飽きるという人はタオルを使ってみるのもいいでしょう。 どれもごく当たり前の動作で簡単なものです。子供の頃、遊びの中で上記の動作をしていたという人もいるんじゃないでしょうか? 本来、人は普段の生活の中で十分に体を使っていたのです。 全部をやらなくて良いので、どれか気に入った(気になる)運動だけやってみてください。 どのくらいやれば良いかということですが最初は1分くらいから。普段あまり運動されない方は1分が長く感じられると思います。 慣れてくれば1回を2~5分と延長していくか、1分を5セットのようにして少し長めにやってみてください。 但し無理は禁物です。鍛えるとは言ってもストイックに追い込む必要はありません。 むしろ軽い負荷で習慣づけてもらった方が長続きします。つま先着地の歩行の補助として運動を行ってもらいたいので、気軽にできる範囲でやってみてください。 そして最後にもう一つ、腱引き療法でよく指導する運動を紹介します。 腱引き療法の運動指導。 「腱引き療法」とは骨を調整する整体と違い、筋肉や腱の調整を行う療法です。同じく筋肉に対するアプローチであるマッサージとも違い〝揉む〟や〝圧す〟のではなく指先を使って筋肉や腱を直接〝引く〟という独特の手技で調整を行います。 さらに施術による筋肉の調整に加え、運動指導という形で簡単な運動を指導します。 この運動指導と独特な手技が「腱引き療法」の特徴になります。 運動指導の目的の一つに筋肉の使い方や連携の仕方を脳にプログラムして(もしくはプログラムを思い出して)もらうことがあります。何らかの不調を抱え筋肉の連携を脳が忘れてしまった場合などは、簡単な運動をして思い出してもらいます。 ですから上記した運動も今回は鍛える方法ということで紹介しましたが、足裏の使い方を覚えてもらう場合でも指導します。 また鍛えるというほどではないですが、より体を上手く使ってもらえるように筋肉の状態を変えてくれる運動も指導します。 その代表格が『スパイラル運動』です。 『スパイラル運動』は柔軟性を上げるために指導する運動です。 詳しいやり方は動画を見てもらうとして、この運動では体を大きく動かすアウターマッスル(表層の筋肉)を使いません。 しかし体のバランスを取りながら足の指を曲げ伸ばしすることで、姿勢を制御するインナーマッスル(深層の筋肉)を刺激しストレッチ効果がでます。 効果は柔軟性を上げることですが、足指の曲げ伸ばしにより骨間筋は鍛えられます。また、足裏を起点とした姿勢制御を行うことで体全体のバランスをとることができます。 動画ではスパイラル運動のあとに腱引きを行い更に柔軟性を上げていますが、スパイラル運動のみでも十分効果を実感できると思います。 1日1メートルで構いません。まずは運動前と運動後に前屈を行い、差を実感してみてください。 職場や学校など、仲間同士で競争しながらやってみると良い話題作りになりますよ。 現代人は人間本来の動きができていない 巷では様々な体操や身体操作が流行っています。そのどれもがこんなキャッチフレーズを掲げていると思います。 曰く〝本来の動き(あるいは治癒力)を取り戻す〟――と。 ということは現代人は、人間本来の動きができていないということです。 ただ、こういったものは生活様式の変化や科学の発達具合によって変わるものでもあります。特定の環境で生き抜く為に器官を発達させたり、逆に使わなくなった器官が退化した生物のように未来の人間の体は変わっていくのかもしれません。 しかし〝いま〟を生きているみなさんは、まだまだ使うべき筋肉が残っています。 健康であるためにも、まずは歩くこと(足の裏の使い方)から見直してみてください。 〝意識する〟ことによって体は変わります。 筆者プロフィール 河野 伸幸 筋整流法 専門指導施術師 筋整流法 東広島道場 道場主 350年続く武術流派の活法であった〝腱引き〟。その腱引きの技を元に現代に合うよう改良されたのが『腱引き療法』になります。 お店の名前が道場となっていますが、これは武術の活法が起源であること。また一方的に施術するだけでなく共に学び合う場所、という意味が込められています。 どこに行ってもダメと諦める前に、腱引き受けに来てみんさい!
1941
筆者プロフィール
河野 伸幸
筋整流法 専門指導施術師
筋整流法 東広島道場 道場主
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