意識して動けば感覚は変わっていく。 これまでつま先着地の歩き方の話をしてきましたが「靴を履いて行うと難しい」という方もいると思います。 これは靴底が踵部分を厚くしていたり、つま先部分を少し上げていたりするからです。 靴を履いてのつま先着地が難しいと感じる方は、まず素足でつま先着地ができるようになりましょう。素足で最初につま先側に体重が乗る感覚というのを覚えてください。 そして靴を履いた時に着地した際、体重が乗っているのがつま先かどうかを意識してみてください。靴の構造上、靴底の踵部分が最初に地面に着いたように感じても、体重がつま先部分に乗っていれば(踵で踏んでいなければ)大丈夫です。 あとは歩幅。つま先着地(和式歩行)だと歩幅は狭くなる傾向にあります。 このように歩くことを気にして動きを意識することで、体の感覚や動きそのものが以前と変わってきたと感じる方もいらっしゃるのではないかと思います。上記の場合だと改めて踵で着地をすると、その衝撃の大きさに驚くと思います。 そこで今度は歩く以外の体の動きを気にしてみましょう。 腕を大きく回す動作でも気づくことはある。 ラジオ体操ってありますよね? 小学生の時、夏休みにやっていたあれです。 正確にできるかどうかはともかく動作はどれも簡単で、すごくよく考えられてます。ラジオ体操第1は最初の1~5の動作がどれも腕を大きく伸ばします(5番目は正確には「体を横に曲げる運動」ですが)。 この腕を伸ばす(或いは回す)という簡単な運動をしてみてください。するといくつか気づくことがあると思います。 「回すと肩が鳴る」とか「腕を上げた時に高さに左右差がある」とか「腕を大きく後ろに持って行くと倒れそうになる」などなど。 更には動かしながら自分の体を少しだけ意識してあげると、もっと気づくことが増えてきます。 ボトムアップとトップダウン。 実は体というのは常に色々な情報を脳へと送っています。それを処理して必要な情報だけを意識に上らせて伝えてきます。 視界に入っていても見ようと思ったものしか見えてないなんてのはその典型です。 それは体を動かしたときにも言えることです。例えば上に書いたラジオ体操の話。 各動作をしている時に、体は色々な情報を脳へと送ります。その時に特に注意すべきことがあれば、違和感や痛みとして意識するわけです。なんかおかしいぞ。動くときに気をつけて、と。或いは痛みを発生してこれ以上動かさないで、と。痛みというのは、体からの警告とも言えるわけです。 しかし、それ以外の情報はカットされ意識に上ることはありません。問題なく体が動いている時にイチイチ「○○の動きは正常」とか、普通は考えませんよね。 でも、そういった情報も脳は受け取っているはずなんです。体を動かした時に送られてくるすべての情報を。 末端から上へ情報上げることをボトムアップと言いますが、このボトムアップされた情報が今現在の体の状態と言えます。 人間の脳は普段から体のチェックをしていますが、軽く動くことによってよりアクティブに体の状態をスキャン(走査)してくれます。 ボトムアップの逆がトップダウン。 よく「若い頃と同じよに動こうとして怪我をした」なんてことを聞くと思います。それは若い頃と同じように動けると思っていることが主な原因になります。これは若い頃の体の状態で判断した上(脳)からの情報が、末端(体)へと向かった例です。経験をもとに、体を動かせという情報が発せられるわけです。 「あれ。怪我をしたのは実際に動けないからじゃないの?」 と思ったアナタ。その通りです。 でもボトムアップによって体が動けないということを知っていれば、そもそもそんな動きをしようとは思わないわけです。 無理ができないというのが分かれば、脳は動くことを拒否します。「怖い」という感情すらわいてくるかもしれません。 もしくは不調が起こった場合、脳は体の動きに制限をかけ健康な時とは違う動きをしようとします。 人間はいくつもの筋肉が収縮することによって動きます。この筋肉の動きの順番をファイアリングシークエンスと呼びます。正しい順序で筋肉が動作するとよいのですが、動作に必要な筋肉の一つに異常があれば、他の筋肉でカバーするか動作そのものが不可能になってしまいます。 体は常に情報のやりとりをしている。 このように脳と肉体というのは常に情報のやりとりをしています。ですから動くときに体を意識してあげると、色々な情報が飛び込んできます。 人は感覚神経を通じて情報を得て、運動神経を通じて体を動かしていくのです。 しかし体を動かす指令経路である運動神経も、使われなくなった筋肉には命令を送りません。そうすると本来は動くのに〝動かせることに気づけていない〟という場合も出てきます。 次回はそのあたりのお話です。 筆者プロフィール 河野 伸幸 筋整流法 専門指導施術師 筋整流法 東広島道場 道場主 350年続く武術流派の活法であった〝腱引き〟。その腱引きの技を元に現代に合うよう改良されたのが『腱引き療法』になります。 お店の名前が道場となっていますが、これは武術の活法が起源であること。また一方的に施術するだけでなく共に学び合う場所、という意味が込められています。 どこに行ってもダメと諦める前に、腱引き受けに来てみんさい!
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筆者プロフィール
河野 伸幸
筋整流法 専門指導施術師
筋整流法 東広島道場 道場主
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