Vol.04 訴え続けること 皆様こんにちは、u-balからだ塾の上原です。 『治療家を本気にさせるための「患者力」養成シリーズ』、第4回目は「訴え続けること」についてお話しいたします。 以前お越し頂いていた患者様で、こんな方がいました。 ある女性のはなし リハビリの為に来院した60代の女性 Aさん 60代、女性。 旅行先で手首の骨を骨折してしまい、東京に戻ってきてから大学病院で手術、手首にプレートとボルトを挿入。(除去の予定なし) リハビリを数か月行うも、症状が良くならないまま打ち切られてしまい、その後リハビリの為に来院されました。 見たところ可動域は回復からほど遠く、手首全体の腫れ、指先にはしびれが残っていました。さらに、親指を使った「握る」と言う動作に力が入らない、といった感じでした。 改善には手術で入れたプレートの除去が必須と判断。再手術を提案 早速私は評価を行い、リハビリ計画を立て、週に2回ほどの施術が始まりました。そうすると、まず腫れは次第になくなり、可動域も少しずつ回復していきました。が、あるところからピッタリ回復が止まってしまったのです。 特に指先のしびれが残っていることから、私は入っているプレートやボルトが神経に接触しているのではないかと考えました。手術後に撮ったレントゲンを再度持参頂き、プレートの位置を確認して、その部分を比較的強めに押圧すると、しびれは悪化しました。力が入らないと言う症状も残っていたため、もしプレートが原因だとすると、症状はこれ以上改善しないばかりか、時間とともに筋委縮が進み、悪化さえ考えられました。 そこで、診察の時に改めて除去したい旨をお話ししてもらうようにいたしました。 再手術=医者が手術の失敗を認めること。当然医者には断られ続けた もともと担当医との話では今後プレート自体を除去する予定はないとのことでしたので、簡単には了承したもらえないことは予想していましたが、案の定『これくらいの症状は残るもの』との説明。 その後のリハビリでも効果は見られないので、再度打診。 しかし、 『もう少し様子を見ましょう』 の繰り返し。 それもそのはずで、除去手術をする事=自らの手術が失敗だったと認めること になるわけで、そう簡単には応じてくれないのも無理はありません。 再手術をお願いするたびに、専門的な用語で並べられて結局手術をしない方がよいことを説明されたAさんは次第に弱気になってきました。 『何かわがままを言う患者みたいで、これ以上は言いづらい』 『先生も忙しいだろうし、もうこのままでも良いかな』 Aさんは人間的にもとても柔和な性格で、とても優しい方です。しかし、聞くところによると、診察時に手を触ることも、動かすこともしないそうです。そんな医師に対し、『自分さえ我慢すればよいのではないか』とAさんは気を遣っているわけです。 本当に、本当に、このままで良いのですか? そんな弱気のAさんに、私は問いかけました。 『本当に、本当に、このままで良いのですか』 これまでのリハビリは決して楽なものではありませんでした。私がそんな風に聞いたのは、誰よりも元に戻りたい想いが強いという事を知っていたからです。 私はもう一度背中を押しました。 医者に気をつかって、フライパンすらまともに持てないこの状況を一生続けることなんて絶対もったいない、と心に訴えました。 そうしたところ、Aさんはもう一度やる気を取り戻してくれました。 もちろん、再手術をすればよくなる保証もありません。しかし、 『誰のでもない、自分の人生ですもんね』 医者に繰り返し訴え、ついに再手術を受けることに そして、診察は2か月に一度のところ、なんと予約も無しに週一ペースで押しかけ、どれだけ自分がこの手のおかげで憂鬱な日々を送っているか、それを救えるのは先生しかいない、と煙たがられるくらい繰り返し訴えたそうです。 結果、ついに気持ちが通じ、再手術になったのです。 再手術後、順調に回復 手術までに期間はあったものの、プレート除去後は劇的にしびれが改善、フライパンも難なく持てるようになりました。これまで頑張ってきたリハビリの積み重ねもあり、順調に回復していきました。 自分の想いを主張することが患者側にも必要 本当は聞きたいのに聞けない、ついつい言いなりになってしまう、納得していないのにそのままにしてしまう・・日本人の潔いところでもあるのですが、特に相手が治療家や医者だったりすると、気を遣う傾向にあります。 これはそういう雰囲気を作らない治療側に問題があることはもちろんですが、仮にそうでなくても、しつこいと思われようが何しようが自分の想いを主張することが患者側にも必要だと思います。 数か月後、嬉しいことにリハビリも卒業になりました。 Aさんからは改めて感謝の言葉を頂きましたが、みなさんお分かりのとおり、私は何もしていません。 すべては 『治りたい!』 『後悔したくない!』 と言う想いと、そのことを負けずに訴え続けたAさんの勝ち取った結果なのです。 皆さんは、治療家にどれだけ遠慮していますか? もしそうなら、出来るだけ遠慮を減らし、自分の本気度を伝えていきましょう。 まとめ 『遠慮は禁物!自分の想いは繰り返し訴え続けよう』 『ちゃんとした治療を受けたい』 『手は抜かれたくない』『きちんと診てもらいたい』 患者側からすれば誰もが願うことですよね。 一方、治療家側から見ると、どれだけ公平に患者様に接しようと思っていても、1日何人、何十人と診ていると、知らないうちに実はお客様を選別しています。 そんな中、より先生を本気にさせ、より適切な治療を受けるための『患者力』をつける方法を、シリーズでお伝えしていきます。 【これまでのコラム】 Vol.1: 『治療院に通っても治らない・・・を防ぐためにできる、たった1つのこと』 Vol.2: 『より効果の高い施術を受けるために知っておくべきこと』 Vol.3: 『治療院で良いアドバイスをもらうのに心掛けることは1つ!自分の情報を伝えること』 著者:上原健志 出版社:中経出版 筆者プロフィール 上原健志 うえはら整骨院院長 セラピストの為の解剖生理学塾u-balからだ塾、 マジックハンズ・セラピストアカデミー代表 女子サッカー『INAC多摩川レオネッサ』チームトレーナー、<資格>柔道整復師、ケアマネージャー、米国NSCA認定パーソナルトレーナー、英国ITEC,CIBTAC国際ライセンス(解剖生理学)、上海中医薬大学短期研修修了(解剖学) 現場での施術はもちろん、プロ向けの指導にも尽力しており、難しい解剖生理学を現場目線で分かりやすく説明するスタイルは、プロ・アマ問わず多くの支持を受けている。 体に関する商品開発など、コラボ企画も多数。
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筆者プロフィール
上原健志
うえはら整骨院院長
セラピストの為の解剖生理学塾u-balからだ塾、
マジックハンズ・セラピストアカデミー代表
女子サッカー『INAC多摩川レオネッサ』チームトレーナー、
<資格>柔道整復師、ケアマネージャー、
米国NSCA認定パーソナルトレーナー、英国ITEC,CIBTAC国際ライセンス(解剖生理学)、上海中医薬大学短期研修修了(解剖学)
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