私がサッカーの現場に携わり12年になりますが、その現場で多い怪我は「捻挫」「打撲」「肉離れ」「骨折」です。その中でも今回は「肉離れ」についてお話します。 肉離れは再発しやすい疾患です。治療の段階からしっかりとしたケアが必要になります。 肉離れってなに? 「肉離れ」とは筋肉を包む膜の「筋膜」や筋肉そのものの「筋線維」が傷付くことをいいます。傷付き具合により筋間損傷、部分断裂、完全断裂に分類されます。 日常生活では起こりにくいですがスポーツなど瞬間的に強い力が働く時に起こりやすいです。筋肉が力を発揮しようと収縮している時に、逆方向の筋肉を引き延ばそうとする力が強制的にかかった時に発生しやすいと言われています。 サッカーではボールをける時にももの前側(大腿直筋)、ダッシュしようとした時にももの裏側(ハムストリングス)、ダッシュ中にターンした時にふくらはぎ(腓腹筋)などに肉離れがみられることが多いです。 肉離れの症状は? 症状は程度により異なります。ボールを蹴る時にだけ痛みが出る程度から、内出血を伴うもの、筋肉の断裂が顕著で筋肉が陥没して見えるもなどです。 肉離れはどうして起こるの? 肉離れが起こる原因はアップの不足、筋肉の疲労、筋肉の柔軟性の不足、過去の肉離れの後遺症などが考えられ、気候の変化や水分不足、栄養不足もその要因として考えられます。 夏場のサッカーでは汗をかき、水分とミネラルが失われ、そこに疲労も重なり、筋肉の伸び縮みが上手くできなくなり、強い衝撃とともに筋肉が痛みます…。 また冬場では外の寒さから筋肉内の血管が収縮しており筋肉自体の温度が上がっていません。そのためウォーミングアップで血流量を上げるのですが、それが不十分であると上手く伸縮しないため肉離れが発生します。 肉離れの後遺症 肉離れに対しての印象を聞いていると捻挫と並び、“比較的、簡単な怪我”と捉えている方が多くいらっしゃるように感じます。 しかし多くのトップアスリートが悩んでいます。それは肉離れには後遺症があるからです。 肉離れが発生した直後は運動厳禁です。それは筋肉が切れているので、その状態で運動するとさらに筋線維が切れ悪化します。 やってしまった直後はアイシングをしてください。アイシングには切れてしまった筋線維からの出血を抑える効果があります。この時の出血量がその後の回復期間に影響を及ぼします。 その後、速やかに医療機関を受診するようにしてください。 「安静にしてシップを貼ってください」と言われた場合は少し注意していただきたいです。それは肉離れには“後遺症”があるからです。 安静にしていれば肉離れは治ります。しかし肉離れを起こした筋肉の部分が硬いまま残ってしまいます。これを『瘢痕(はんこん)』といいます。 この瘢痕部は柔軟性が欠けるため再発しやすくなるほか、コブのようになってしまうと血管や神経を圧迫し、血流不足による冷えやしびれの原因ともなります。 肉離れのケア 運動選手にとって怪我とは“ただ治ればよい”ということではなく競技に復帰できてなんぼ、だと思います。 そのため肉離れをしてしまったら ①まずは損傷の被害を最小限に抑えるためにアイシングをしましょう。 基本は応急処置法のRICES(安静・冷却・圧迫・拳上・固定)です。 ②医療機関を受診し、筋肉の損傷程度を確認しましょう。 ③瘢痕化させない治療を行いましょう。 ④リハビリをし、競技に復帰しましょう。 肉離れの瘢痕化を防ぐ 筋肉を緩める 瘢痕を防ぐためにマッサージは有効な方法です。多少の痛みを伴っても硬くなってしまった筋肉を緩めるようにマッサージを行うことは必要です。 しかし通常の疲れた筋肉をほぐすのとは違います。国家資格や専門的な知識を持った人にお願いしましょう。誤った方法では悪化する恐れもあります。 また鍼は筋肉に刺し、患部の深さまで直接アプローチができるため瘢痕化を防ぐにはうってつけです。 温める 傷んだ筋肉からは出血をしています。そのため受傷直後はアイシングをしますが、その後は温めて患部の血流を促進させます。そうすることで漏れ出た血液の再吸収と修復に必要な栄養素を積極的に集めることが出来ます。 痛みが増さない程度にお風呂で温まることもよいです。 また患部の筋肉を直接温めることができ、血流改善、筋緊張の緩和に適しているお灸もオススメです。その中でも私が師範を務める「枇杷葉温圧療法」は、びわ葉に含まれる鎮痛作用、抗炎症作用のある成分をプラスするので肉離れのケアには最適です。 水、栄養補給 水分不足は筋肉の伸縮を狂わせます。また筋肉が正常に働くためにはカルシウムやカリウムなど様々な栄養素が関わっています。予防のために運動中からサプリメントなどで積極的に補給するほか、肉離れを起こしてしまった後も筋肉の基となるタンパク質やビタミン、ミネラルを積極的に摂りましょう。 多めの水でサプリメントを飲むのがよいと思います。 年齢を問わず、運動すると栄養素は消費されるので補給が必要です。若いから大丈夫!はありません。肉離れ予防のためにも不足する前に補給をしましょう。 あとがき 先日、全国大会の出場が決まったがその直後に肉離れをしてしまい、せっかくのチャンスを無駄にしたくないからなんとかして欲しい、と依頼がありました。 幸いなことに軽度であったため、その日から現地入りするまでの1週間、当院にて枇杷葉温灸を施しました。やる度にその場で痛みが消え、2回は翌日の練習後に痛みが出ましたが3回目以降は練習後の痛みがなくなり、現地出発前も施灸していきました。 テーピングは巻いていたものの無事にプレーできたとの報告をいただきました。 肉離れは踏ん張った時など頑張った瞬間に痛みが増します。そのため痛みがあると頑張れません。その痛みのコントロールを薬を使わないで出来るのもこの療法の特徴だと考えています。 当院は頑張るアスリートを応援しております! 一色浩太 つるのこころ治療院院長(鍼灸按摩マッサージ指圧師) 一般社団法人 まほろば東京融合療法研究会付属施術所 所長 中国上海中医薬大学 解剖学短期研修修了 枇杷葉温圧療法 師範 (福寿弁天秘法 濱田家直系) 治療の主役は「あなた自身」です! 人には自らを治そうとする自己治癒力があります。その力を最大限に引き出し、整えてあげることで症状に対して根本的な側面からアプローチしていきます。 また東洋医学では病気になる前に治療や養生をして未然に防ごうということを「未病知」といいます。当院はこの病気になる前の"予防"にも力を入れ、根拠のある施術、指導を行っていきます。
一色浩太
つるのこころ治療院院長(鍼灸按摩マッサージ指圧師)
一般社団法人 まほろば東京融合療法研究会付属施術所 所長
中国上海中医薬大学 解剖学短期研修修了
枇杷葉温圧療法 師範 (福寿弁天秘法 濱田家直系)
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