最近、骨盤をメインに施術する治療院やサロンが増えてきました。 テレビや雑誌などでも骨盤について頻繁に取り上げられます。 でも、一般の方はどのくらい骨盤について知っているでしょうか。 人体は一番身近ではありますが、それがゆえに知られていないこともたくさんあります。 毎日十数時間は骨盤のことを考えている私がごく基礎的なところを私なりに整理してみたいと思います。 あくまでも研究者ではなく、臨床家の目線から書いてみます。 骨盤は2つの骨からできている 骨盤は2つの寛骨(かんこつ)と1つの仙骨(せんこつ)から出来ています。 寛骨は腸骨(ちょうこつ)・恥骨(ちこつ)・坐骨(ざこつ)と呼ばれる3つの骨が癒合しています。 寛骨と仙骨は仙腸関節と呼ばれる関節で繋がっています。寛骨を形成する3つの骨のうち腸骨と仙骨が繋がっているから仙腸関節です。 仙腸関節は“関節”と呼ぶには少々変わった形状をしています。 仙骨側、腸骨側双方に人間の耳のような形をした“面”がありますが、この“面”が合わさっているのです。 この“面”は表面に小さな凹凸が複数ありますがほぼ平らで、お互いがガッチリ組み合わさるわけでもなく、一見、とても不安定な関節です。 また、左右の恥骨が合わさり、恥骨結合を形成しています。 骨盤は仙腸関節と恥骨結合で環状になっています。 仙腸関節は力が3方向から加わることにより安定している 仙腸関節は一見不安定ですが、上半身の体重と地面からの反力が3方向から加わることにより安定を保っています。 靭帯や筋肉でがっちりサポートはされてはいますが、仙腸関節を安定させるのはあくまでも体重と地面からの反力です。 3方向から加わる力は骨盤の中心で合わさり、骨盤の内腔を120度ずつ3等分します。 この力が合わさったところが身体運動の中心です。 東洋医学では丹田と呼ばれたりしています。きれいに3等分されているので上半身と下半身の動きを上手くコントロール出来るのです。 解剖学では仙腸関節は「不動関節」に分類されています。 何故かは分かりませんが、そうなっています。 ホルマリン漬けの古くなったご遺体の仙腸関節は動かないからという説もあります。 しかし、歩くときに腰周辺に手を当てれば簡単に分かることですが、仙腸関節は動きます。 写真のように前後に弧を描くような動きです。 前方への動きを“ゆるむ”、後方への動きを“締まる”と表現します。 恥骨はクランク様の動きでそれに追随します。 歩くとき以外にも仙腸関節は常に細かく動いて上半身と下半身のバランスをとっている非常に重要な関節です。 身体を大きく傾けることなく片足で立てるのは仙腸関節の働きによるところが大きいです。 余談ですが、二足歩行のロボットをテレビなどで見かける機会が増えました。しかし仙腸関節が存在しているロボットは私の知る限りありません。 股関節と、膝関節、足関節だけでバランスをとろうとするのでどうしても動きがぎこちなく見えてしまいます。 骨盤がずれるとは? よく“骨盤がずれる”といった表現を耳にしますが、正確にはずれるのは仙腸関節と恥骨結合です。 しかし、臨床上、仙腸関節を整復すれば多くの場合、恥骨結合も整復されてしまうので、ここでは仙腸関節がずれるということにします。 仙腸関節は通常の動きでもゆるんだり締まったりしていますが、“骨盤がずれる”と言った場合、大きく分けると二通りのずれ方をします。 許容範囲を超えてゆるんでしまう場合と、逆に締まりすぎてしまう場合です。 大きく分けると二通りですが、細かく見ると人によって様々です。 仙腸関節の正規の軌道上でずれていてくれれば話は簡単ですが、軌道を無視したもの、関節内部が大きく傷ついているもの、過去には締まりすぎていたものが、現在はゆるんでいるもの、もしくはその逆。 多種多様のずれかたをしているので、このずれ方を見抜くのが臨床の第一歩です。 身体の不具合の多くは仙腸関節のずれに起因 イメージしにくいかと思いますが、腰痛を始め、身体の不具合の多くはこの仙腸関節のずれに起因します。 仙腸関節のずれに伴い、身体運動の中心(丹田)がずれてしまいます。また、そのせいで身体の他の各部分がずれて痛みや不具合を発生させるのです。 逆に言えば、仙腸関節のずれを整復することにより、身体の痛みや不具合の多くを取り去ることが可能です。 手技療法の世界には様々な流派(?)が存在しますが、仙腸関節に着目をしている先生は押しなべて成績がいいようです。 病院に長く通っても治らなかった腰痛が整体院などで簡単に治ってしまうことがあるのはそのためです。 またまた余談ですが、ここ1~2年整形外科では「腰痛の80%以上は原因不明」ということが公式見解になりました。 仙腸関節を「不動関節」と捉えてしまったことは上に書きましたが、仙腸関節の重要性に気付いていないためにそのような見解に至ったのだと思います。 画像診断でヘルニアなどはっきりした異常が腰椎に見当たらないと原因が特定出来ないのです。 仙腸関節のずれとはほんの数ミリのずれのことである 「仙腸関節のずれ」と言うととても大きくずれているようにも思えますが、実際にはほんのわずかです。成人男性の仙腸関節が最大にずれても6ミリぐらいと言われています。 骨盤の外周部で測ると3~4センチずれているように見える場合もありますが、そんな時でも仙腸関節のずれは数ミリです。 なので、経験上、ここを整復する際は軽く触れる程度の力で穏やかに行なうのが一番良いように思います。 以上、分かりにくいところもあるかと思いますが、骨盤の基礎でした。 筆者プロフィール 吉川良介 柔道整復師 吉川整体院長 昭和41年2月 東京生まれ 平成11年3月 「梅ヶ丘よしかわ整骨院」開院 平成17年8月 同院閉院 平成17年10月 東急世田谷線上町駅前にて「吉川整体」開院 現在、都内を中心に東北や、関西方面からも訪れて頂く患者さんの施術に忙しい日々 を送っている。
筆者プロフィール
吉川良介
柔道整復師
吉川整体院長
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