みなさんに馴染みのある筋肉は、伸びたり縮んだりして動作を生み出す筋繊維と、その筋繊維をキャンディの包み紙のように束ねている筋膜で形成されています。 最近、よく耳にするようになった筋膜ですが、実は何年も前から着目していた人物がいます。 世界3大ボディワークの1つ、ロルフィングの創始者Ida Rolfは「筋膜は姿勢の臓器」と言っています。 そのIda Rolfの教えを発展させ、筋膜のつながりを電車の線路の様に例えた『アナトミートレイン』の著者トーマスマイヤースは、「筋膜は身体のシンデレラ組織」なんて言っています。 筋膜の特徴 筋膜は筋肉の形を作っていて、感覚に優れています。 そして、形を変えることが出来ます。 筋肉を長時間伸ばすシーンが多い方は、筋肉の形が細くてしなやかな形になったりします。 筋膜にはセンサーが多くあり、感覚をキャッチするのに優れています。 ストレッチなどで筋肉が伸びる感覚を経験したことがあるかと思います。 この伸びる感覚は筋膜で多く感じられると言われています。 筋膜は全身で影響し合っている 筋膜は全身をネットワークしていて、全身で影響し合っています。 筋肉は例外を除いて骨と骨にくっ付いています。その筋肉が縮むことで付着している骨と骨が動き、その骨と骨の間にある関節が、効率よく効果的に動作を生み出します。 厳密にいうと筋肉と骨の付着は、筋肉の形を作っている筋膜が、骨の表面の骨膜へと膜を介してつながっています。 例えば、足の指先の骨からかかとの骨は、足底腱膜という腱膜で結ばれています。 かかとの骨から身体の背面の方にはアキレス腱があり、そのアキレス腱を上の方にたどると、ふくらはぎの筋肉になります。 ふくらはぎの筋肉を上の方にはわせていくとひざ裏周辺の骨に付いています 。ももの裏の筋肉はひざ裏の骨にくっ付いていて、骨盤にある坐骨という骨にくっ付いています。 そして、坐骨から尾てい骨には仙結節じん帯という筋肉より少し硬く、骨より少し柔らかいじん帯で繋がっています。 尾てい骨から上にたどると仙骨があります。仙骨から背骨に沿って縦に走行する脊柱起立筋群という筋肉があります。 その筋肉は首を越えて後頭部にくっ付いています。 また、後頭部からは頭皮の下には帽状筋膜が存在していて、後頭部から眉間に向かってくっ付いています。 ここまで確認してきたルートは、足の指先から眉間まで、骨→筋肉→骨→筋肉………と繋がっていると考えられます。 それをさきほど確認した筋肉と骨が膜を介して繋がっていることに注目すると、骨膜→筋膜→骨膜→筋膜………と膜を介して全身繋がっていると考えられます。 それは、前述した『アナトミートレイン』の考え方で、まさに駅→線路→駅→線路………の様につながっています。 服を1か所つまむとみえてくる、筋膜の特徴 筋膜の全身ネットワークしている特徴を全身ボディスーツや全身タイツの様に考えることも出来ます。 例えば、今着ている服を筋膜と考えます。どこでも構いません、1か所つまんでみてください。つままれた場所というのは窮屈感があったり、違和感を持ったりすると思います。 それを感じるのは、その場所だけでしょうか? その近辺に違和感があったり、はたまたそこから遠く離れた場所に同じく窮屈感や違和感があったりします。 左のわき腹の辺りの服をつまむと、右の肩にも窮屈感や違和感が現れます。 この右肩の服のつっぱりを直そうとすると、今度は背中の中央だったり、左の肩の下あたりにつっぱりを感じたりします。 実は人の身体でも同じことが起こっています。これが筋膜の全身ネットワークしている特徴です。 あくまでも一例ですが、左のわき腹の筋膜が過度に緊張したり、くっ付いてしまったりしていると、その部分に不調が表れます。 同時に右肩の筋膜にも緊張が生まれ、それが肩こりの様な不調を生み出したりしています。 全身をネットワークしている筋膜の程よい緊張によって、人の姿勢が作られています。 世界3大ボディワークの1つ、ロルフィングの創始者Ida Rolfは、「筋膜が適度に緊張することによって、組織があるべき位置に戻る」と言っています。 身体のそれぞれの組織があるべき位置に戻ることで、本来持っている役割を果たしたり、適した形状になったりします。 しかし、現代社会の中で暮らす我々の身体には、その緊張が強すぎる部分が生まれます。 そうすると全身のバランスが崩れ、組織が本来あるべき場所からずれてしまって、姿勢も崩れてしまいます。それが姿勢の臓器と呼ばれるゆえんです。 そんなたくさんの役割や機能を持つ筋膜は、今までほとんど注目されていませんでした。 まさに筋膜がシンデレラ組織と言われる由縁です。 まるで魔法が解けてしまったかのように一時的なブームで終わる組織ではなく、健康、美容、スポーツなどさまざまなシーンで活躍する可能性を秘めた身体の組織なのです。 筋膜ボディセラピー著者:大久保圭祐 出版社:三栄書房 筆者プロフィール 大久保圭祐 全米ストレングス&コンディショニング協会認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト 米国Rolf InstituteR卒業し、世界三大ボディワークのロルフィングRを修得する。トレーニングやエクササイズ、ランニング等の運動処方、ストレッチングや筋膜リリース等の手技を使って、クライアントの要望に応える。各種メディアにてボディメークの監修、セミナー講師、コラムの執筆など幅広く活躍中。
筆者プロフィール
大久保圭祐
全米ストレングス&コンディショニング協会認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト
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