西洋では「魔女の一撃」と言われているぎっくり腰。 突然、前ぶれもなく襲ってくる激しい痛みは、経験した人であれば二度と味わいたくないと思っているはずです。 しかし、実際にはぎっくり腰を何度も繰り返している人が多いのではないでしょうか。 なぜ、ぎっくり腰は癖になって再発してしまうのか。今回は、ぎっくり腰の原因と対処法についてご紹介していきます。 あまり知られていないのですが、ぎっくり腰の正式名称は「急性腰痛症」です。 なぜ突然に腰が痛み出すのか。その原因とメカニズムはあまり知られていません。 本や雑誌、ネットを見ていると、「ぎっくり腰の原因は腰の疲労にある」と書かれているものが多いのですが、実は単に腰の疲労が原因でぎっくり腰が起こるわけではありません。 骨や骨盤の歪みも直接的な原因ではありません。 ぎっくり腰の本当の原因は「上半身」に潜んでいるのです。 広背筋はすごい筋肉!ぎっくり腰の原因となる動作。 ぎっくり腰の原因は、腰(腰椎や骨盤の周辺)の筋疲労にある言われることが多いのですが、実は上半身の問題が見逃せません。 ぎっくり腰になる状況を考えてみると、それがよくわかります。たとえば次のようなケースです。 ・ゴミを拾おうとして床に手を伸ばした時 ・両手を挙げて伸びをした時 ・机に置いてあるメガネを取ろうと手を伸ばした時 ・服を着替えている時 ・洗濯物を干している時 このように、腕を伸ばした際にぎっくり腰になるパターンがとても多いのです。 それには構造的な理由があります。 骨盤の上腕(二の腕)は、広背筋という大きな筋肉でつながっています。 この広背筋は、腕背中、腰、骨盤を覆うようある、人間の最も大きな筋肉です。 この広背筋があるおかげで、腕と骨盤が連動してスムーズに動けるのです。 逆にいえば、広背筋に問題が起きた途端に、腕と骨盤の動きはギクシャクします。 この事実を知っていると、腕を無理に使おうとしたときに腰に負担がかかることが理解できます。 しかし、ぎっくり腰になった時、腕を無理に伸ばした覚えがない方もいます。 寝返りで発症してしまう方や、椅子から立ち上がろうとしたら...、と特別な負担が腕にかかっているようには思えない場合も少なくありません。 広背筋は背中の真ん中くらいから腰を覆っていますので、捻る動作でも腰にトラブルを引き起こしてしまうのです。 腰ではなく「腕」を動かそう!ぎっくり腰を早く治すストレッチ ぎっくり腰になったとき、痛いところをグイグイと力任せに押したり揉んだりするのが一番よくありません。 一時的には“効く”ような感覚を得ても、ぎっくり腰が悪化してしまう場合があります。 痛むところに何かしてほしい!という気持ちをグッと押さえることが大切です。 もちろん、安静にすることも重要です。痛みを我慢して頑張って動いても、痛みが悪化するだけです。 では、ぎっくり腰になってしまったら、ただただじっと待つしかないのでしょうか。 1日でも早く治して仕事に復帰したい、大事な行事が控えているという場合は、どうすればよいのでしょうか。 ぎっくり腰の原因で説明したように、 腕と腰の関係を利用すれば回復を早めることが可能です。 そのためには“腕の動きが悪い”という事実に注目します。 まず、一番楽な姿勢を見つけてください。その状態になったら、腰ではなく腕を動かしていきます。 腰を動かすのが辛くても、腕は動かせる場合があるからです。 腰に痛みが出ないように、ゆっくりと腕を頭上に向かって伸ばしていきましょう。 完全に伸ばす必要はありません。できるところまで行ってください。こうすると、広背筋のストレッチができるので、ぎっくり腰が早く改善していくのです。必ず、腰に痛みが出ないようにゆっくりと行うことが大切ですよ。 このストレッチをやってみると、左右でやりづらい側があることがわかります。動かしずらい側が、ぎっくり腰の原因になっているのですが、最初はやりやすい側(原因でない方)からストレッチを行って動きに慣れてください。 絶対に痛みを我慢せず、できる範囲で行い、疲れたら休んで安静にすることが大切です。 肩と腰を連動させ、ぎっくり腰を予防できる生活をしよう! 「ぎっくり腰は癖になる」と言われることが多いのですが、その癖の正体は、広背筋の強張りです。 腕と腰が連動せずに、腰に負担がかかってしまうのです。 ちなみに、腕の方に負担がかかれば、五十肩・四十肩と言われるような肩の痛みに発展します。 人の肩と腰は、四足歩行を行う動物でいえば、前脚と後脚の関係です。 ですから歩行というもっとも基本となる動作が重要になってきます。 二足歩行となった人間も、歩くことによって肩と腰が連動するようになっているのです。 この肩と腰の連動を常に保ち続けることがぎっくり腰の予防になります。 上半身の力を抜き、腕が自然に振られる感覚を大切にしてください。特にデスクワークが多いと、広背筋が凝り固まってしまいます。 凝り固まる前に伸びをして、日頃からほぐしておくことが必要です。 専門家に治療を任せる時の注意点 安静にしていても、ぎっくり腰の痛みが取りきれない場合、どうしても癖が抜けきれない場合は、専門家の力を借りるのもよいでしょう。 痛いところが悪いのではなく、痛いところは負担が集中してしまっているところです。 ですから、ぎっくり腰に限らず、痛みが出ている場所だけをいじってもなかなか痛みは改善していきません。 今回は広背筋の問題を取り上げましたが、実際の症状では複雑に原因が絡み合っている場合があります。 痛みや癖には必ず原因が潜んでいるので、体の動きの問題をしっかりと見極めて施術してくれるところを選ぶことが大切です。 まとめ ぎっくり腰の原因が腰ではなく、腕との関係にあることがお分かり頂けたでしょうか。 ぎっくり腰を早く治したい、ぎっくり腰を予防したいとお考えの方は、ぜひ腕がしっかり挙がるかをチェックしてみてください。 腕がまっすぐに挙がらないようであれば、日頃からストレッチをして疲労をとっておきましょう。 また、歩くことで、腰と腕の連動が回復してきますので、日頃からウォーキングの習慣を付けてみてください。 ただし、一人では不安な時は、動きを分析できる専門家に相談してみてくださいね! 鍼灸院に行ったことありますか? 「鍼灸」と言っても、やり方は千差万別。鍼灸院によってコンセプトも得意分野も違います。でも、その違いは外からわかりにくいものです。 あなたの鍼灸院を選ぶ時、何を基準にすればよいのか、鍼灸院の腕の違いはどこに出るのかなど、2つの鍼灸院を経営する現役鍼灸師がシリーズでお伝えします。 【これまでのコラム】 Vol.1:『鍼灸でできることを知っておこう』 Vol.2:『鍼のイロハ、灸のイロハ』 Vol.3:『鍼灸院は専門院がおすすめ』 Vol.4:『鍼灸院選びは雰囲気も大切』 Vol.5:『鍼灸院に行く前の心構え』 筆者プロフィール 栗原 誠 鍼灸師 あん摩マッサージ指圧師 鍼灸養気院院長 はりきゅうルーム・カポス代表 ダイエットアドバイザー協会代表 活法研究会副代表 群馬に鍼灸院を構え患者さんと向き合う傍ら、東京の鍼灸院を経営。日本古 来の整体術「活法(かっぽう)」に魅せられ、その叡智を鍼灸の分野に導入。 新たに「整動鍼」を提唱し、プロ向けの技術セミナーを定期的に開催。 また、ブログや業界誌での連載を通じて、情報発信も積極的に行っている。
筆者プロフィール
栗原 誠
鍼灸師 あん摩マッサージ指圧師
鍼灸養気院院長
はりきゅうルーム・カポス代表
ダイエットアドバイザー協会代表
活法研究会副代表
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