治療院に通っても治らない・・・を防ぐためにできる、たった1つのこと【患者力1】
Vol.1『目標設定』
あなたは『一生通い続ける』つもりで治療院に行きますか?
第1回目はまず目標設定についてお話しします。
あなたは治療院に通う時、目標、つまり『○月頃に卒業しよう』と考えながら通っていますか?
ちょっとピンと来ないでしょうか。
では別の言い方。
あなたは『一生通い続ける』つもりで治療院に行きますか?
これでしたら、ほとんどの方が「いいえ」と答えますよね。
そうなんです。治療なわけですから、当然いつかは「卒業」が大前提なはずです。
ところが、そういった話をしてくる患者さんは残念ながらほとんどいらっしゃいません。そこにあるのは「先生にお任せする」と言う謙虚なお考えかもしれませんが、実はそこがはっきりしないと、正しい治療は受けられないのです。
家庭教師には「受験」までという期限があるが、治療院には期限がない
例えば、受験における家庭教師さんの業務を考えてみましょう。
どんな内容・教え方をするかは、
・受験までの時間がどれくらいあるか(期限)
・志望校はどのレベルか、それに対し現在の学力はどれくらいか
・どれだけの頻度で授業が可能なのか
・何よりも本人のやる気と性格
が必須事項となってきます。
つまり、例え同じ家庭教師とはいえ、生徒全員に同じ内容ではなく、それぞれの状況によって変える、いや、変えるべきなのです。
治療院の場合に置き換えても同じで、そのお客様の個々の状況に応じてアプローチ法を変えなくてはなりません。ところが、受験と違って、治療の場合この「期限」がありません。
明確な期限がないといつまでも通い続けることに
明確な期限があるからこそ治療内容が決まるわけですが、その期限を設定しないとどうなるのか。
まず、いつまでも延々と通い続けることにもなりかねません。
そして、仮に治らなくても治療家がその責任を取らなくても良くなります。もう少し時間がかかるかもですね~・・と言い続けても業務は成り立つわけですし、何よりも通院が続けば、商売的にも嬉しいわけです。
一方、実際「いつまでも通い続けることが苦痛でない」「マッサージ感覚で通い続けたい」と言う患者様もいます。
もちろんこれが悪いという事ではなく、こういった方であれば期限を定めなくても良いわけですが、もしあなたがそうでないとしたら、勘違いされないようにしなくてはなりませんね。
患者側から期限を提示することが必要
先日いらした患者様の話です。
『昨年バイク事故に遭い、内臓挫傷、肋骨骨折、右大腿骨骨折(皮膚から骨が飛び出る大けが)をした。
その後右下半身に力が入らない。これが麻痺かどうかは断言されず、延々とリハビリを続けている。納得いかないので点々と医者を変えているが、どこも明確な答えを出してくれない』
ちなみに、バイクの同乗者は即死だったそうです。
『治りたい気持ちはあるけど、後遺症なら後遺症として受け入れる覚悟はある。どっちにしても、心を決めて次に進みたい。けど、治る期待をいつまでも持たされると不安で進めないんです』
この話を聞いたとき、同業者として心を引き裂かれる想いでした。点々とするのは、私でなんとか最後にしてあげよう、と心に決めました。
聞きますと、これまでの施術内容は問題ありません。接客も問題ありません。問題なのは、期限を区切らないこと。
彼女の笑顔の裏に、そんな強い想いがある事に気づかないこと。
『これってこれまでの先生たちに話したことある?』
『いや、タイミングが無くて話していません・・』
治療中は楽しく話をされたり、なんてことない世間話が続き、そこまで真剣なことを言い出せなかったそうです。
もちろんタイミングを作るのは患者様ではなく、あくまでも治療家側の責任です。
が、もしそれがないとしたら、こちら側(患者側)からそれなりの話をしなければなりません。
「○○があるからそれまでに~」理由を付けて期限を提示する
具体的には、
『~だいたいいつ頃までに良くなりたい』
また、合わせて何かしらの理由をつけると良いです。
例)娘の結婚式があるからそれまでに
サッカーの大会があるからそれまでに
夏に入ると忙しくなるからそれまでに など
このように、およその希望を伝えることで、はじめて治療家側の責任が問われることになります。
その期限までに結果を出すことが可能なのかそうでないのか、どれくらいの頻度、自宅での努力が必要なのか・・・つまり、本気で施術してもらいやすい環境が整ってきます。
『専門的な知識は分からないし、目標なんて、先生が決めることじゃ・・』
と思う方もいらっしゃるかもしれません。
専門的な知識が無いからこそ、決めなければいけないのです。もしそれが無理な目標なら、そもそも施術を始めない方がお互いのためだったりするわけですから。
交通事故の患者さんですが、私は3か月と期限を区切りました。その結果、もしかしたら改善できない点もあるかもしれません。しかし、それはそれで納得する、とおっしゃってくれました。その代り、この3か月間、全力で施術します。そして結果がどうであろうと、その責任は私にあります。
患者さんの新しい人生のスタートのために。
まとめ
『言いにくくても、およその目標の話をしてみよう』
『ちゃんとした治療を受けたい』
『手は抜かれたくない』『きちんと診てもらいたい』
患者側からすれば誰もが願うことですよね。
一方、治療家側から見ると、どれだけ公平に患者様に接しようと思っていても、1日何人、何十人と診ていると、知らないうちに実はお客様を選別しています。
そんな中、より先生を本気にさせ、より適切な治療を受けるための『患者力』をつける方法を、シリーズでお伝えしていきます。
著者:上原健志
出版社:中経出版
筆者プロフィール
上原健志
うえはら整骨院院長
セラピストの為の解剖生理学塾u-balからだ塾、
マジックハンズ・セラピストアカデミー代表
女子サッカー『INAC多摩川レオネッサ』チームトレーナー、<資格>柔道整復師、ケアマネージャー、米国NSCA認定パーソナルトレーナー、英国ITEC,CIBTAC国際ライセンス(解剖生理学)、上海中医薬大学短期研修修了(解剖学)
現場での施術はもちろん、プロ向けの指導にも尽力しており、難しい解剖生理学を現場目線で分かりやすく説明するスタイルは、プロ・アマ問わず多くの支持を受けている。
体に関する商品開発など、コラボ企画も多数。
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