変形性膝(しつ)関節症で軟骨がすり減り、正座も階段昇降もできないTさんは、人工関節手術をしようか悩んでいました。来院時に歩き方を見ると、これがドスン、ドスンと大きな音のする大股歩き。 そこでかかとが着く際の音が立たないよう、小股での歩き方を指導したところ、3カ月後、「階段も上がれるし、正座もできますよ」と喜びの報告がありました。 この事例の根っこには、日本人と西洋人の骨格差があります。 両者の重心の違いが歩き方に関係するからです。 「前方重心」の日本人には小股歩きが適している 背中を丸めて前かがみになった田植えの時の姿勢に象徴される「前方重心」の日本人は、骨盤が後ろに傾きがち。 だから小股で歩くのが適します。 一方、馬などに農具を引かせ、直立姿勢で農耕をする「かかと重心」の西洋人の骨格は、骨盤が前に傾きがち。 大股でかかと着地が向いているのです。 長年染みこんだ前方重心のDNAはそんなに早く変われないのですが、文明開化によって日本人が西洋靴を履くようになり、大股でかかとから着地する西洋型歩行になりました。 今ではそれが正しい歩き方となっていますが、はたして日本人に合った歩き方といえるでしょうか。 体を美しく見せるモデル歩きや、ヒールを履いて歩くときとは分ける必要があります。 オシャレと健康は別なのです。 靴底の外側が減っていたら大股で歩いている証拠 わらじでかかとを着けない歩き方は足指を使います。 一方、大股のかかと着地は足指を使いません。そのため、足のゆがみも大きくなりがちです。 靴底の外側が減っていたら、その傾向があると思ってください。 仕事上、そういった歩き方をしないといけない場合、一日の最後に歯磨きの感覚で小また歩きをしてください。 1日1回、小股で歩く習慣を! 小股歩きの癖を付けるには、まず後ろ向きに歩いてみること。 自然と歩幅が小さくなり、足指を使って床を蹴って歩く感覚がつかめたら、そのままの歩幅と速さで前向きに歩きます。 それが小股歩きを体に覚えさせる秘訣(ひけつ)です。 着物を着て、膝下を使って歩くような感覚といえば分かるでしょうか。 もしくは家の中でフローリングの音がしないように歩いてみてください。自然と小またで足裏全体を使った歩き方になるはずです。 その歩き方を毎日5分続けると、自然と足裏の筋肉がつき、歩くバランスが改善。健康ですてきな歩き方になりますよ。 人の体は足指を使って歩くことで全身の正しい筋肉(前後左右に均等に筋肉を使う)を使うことができますが、靴下や靴、歩き方などによってその機能が発揮できにくくなっています。 これまで歩くことで悪くしてきた方もいらっしゃると思いますが、それは足指を曲げて歩いていたからです。足指を伸ばしてからだの歪み良くなるということを実感していただければと思います。 ただし、外反母趾や浮き指・屈み指があると、足ゆびでふんばれないため、重心がかかとに片寄ります。 これが、踵歩きの原因にもなります。足指を矯正する靴下型の装具としてゆびのばソックスは最適です。3歳~履ける園児用ソックスもありますのでお試しください。 足ゆびの「パーができない」のも問題です。足ゆびの変形と同様に、足ゆびで踏ん張れないために重心が踵寄りになります。1日1回5分を目安に行ってみましょう。 ゆびのばソックス通信販売サイト「ゆびのば.COM」 一生元気でいたければ足指を広げなさい 著者名:湯浅慶朗 出版社:あさ出版 著者プロフィール: 湯浅慶朗(ゆあさよしろう) 理学療法士 みらいクリニック付属フットケアセンター長 西日本新聞で22回連載 NHK放送 「サキどり」に2回出演 フットケアセンターでの足腰の悩みに取り組む他、専門家向けの講演で全国のみならず、海外でも講演会を行い、世界各地を飛び回わる傍ら、独自ブランドの足指を矯正する靴下ゆびのばソックスの開発や研究も行い、活動は多岐にわたる。 Anan、日経ヘルス、クロワッサンなど多くの雑誌にも掲載。 あさ出版「一生元気でいたければ足指を伸ばしなさい」など著書多数。
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著者プロフィール:
湯浅慶朗(ゆあさよしろう)
理学療法士
みらいクリニック付属フットケアセンター長
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