痛みの新常識!慢性痛が3ヶ月以上続く理由とは?
怪我や病気が治っているのにも関わらず、続く痛みを「慢性痛」といいます。 肩こり、腰痛、膝の痛みなど、病院や治療院を渡り歩いても痛みが取れない人たちが増えています。慢性痛に悩まされている人は日本国内で2300万人以上ともいわれていますが有効な治療法がまだ確立されていません。 同じ痛みでも日に日に良くなる人と、なかなか良くならず痛みが長引く人がいるのはなぜでしょう? 今回は、科学的に分かってきた長引く痛みの仕組みと、慢性痛に対する新しい試みについて書いていきます。 痛みとは何か 誰もが経験したことがあり感覚的には知っている痛み。 そもそも痛みとは何なのでしょう? 国際疼痛学会による「痛みの定義」というものがあります。 ここでは以下のように説明されています。 実際に何らかの組織損傷が起こったとき、または組織損傷を起こす可能性があるとき、あるいはそのような損傷の際に表現される、不快な感覚や不快な情動体験 少し難しいですが説明すると、痛みとは組織が損傷した時などにその情報を脳に知らせるための警報装置です。一方、痛みは情動体験でもあり、感情の動きともいえます。 つまり、人は痛みを感じている時、実は同時に痛みに伴う不安や恐怖も感じているということです。 感情が痛みを引き起こす 一見感情と痛みとは別物のように思えますが、感情の動きによって脳の働きが変化して痛みの強さが変わることが分かっています。 例えば、病院で検査を受けて「軟骨がすり減っています」「手術しないとなおりません」などと言われることがあります。 このような事を言われると不安になりますね。 不安、恐怖、怒り、悲しみといった感情がある時、脳の中では大脳辺縁系が活発に活動していることが分かっています。大脳辺縁系は痛みにも大きく関係している部分であるため、不安や恐怖が大きくなって活動が高まれば高まるほど、痛みも強く感じるようになるのです。 痛みは脳が感じている 痛みを感じているのは脳です。そして痛みを引き起こしているのは「発痛物質」と呼ばれるもので、代表的なものに「ブラジキニン」があります。 怪我などの刺激があると交感神経が活発になります。交感神経が活発になるとその働きによって血管が収縮して血流が悪くなり、筋肉などの組織に十分な栄養や酸素が運ばれないため組織は軽い酸欠状態となります。この酸欠を緊急事態と判断してブラジキニンが発生し、知覚神経を刺激、痛み情報として脳に伝わるのです。 脳の機能低下 怪我などによる痛み情報が脳に伝わると脳内に痛みの回路が出来上がります。怪我が治ってしばらくはこの痛みの回路が脳内に残っているのですが、背外側前頭前野(DLPFC)がこの興奮を鎮めるよう指令をだします。すると回路の興奮が鎮まって痛みの感覚も次第になくなっていくという仕組みです。 ところがカナダの大学の研究によれば、慢性痛を持っている人たちの脳を調べると、この興奮を沈めて痛みの感覚を低下させるDLPFCの活動が低下していることが分かりました。DLPFCが働かないと痛みの回路の興奮を鎮める命令がされないために、怪我が治ったあとも痛みの興奮が続いている慢性痛に移行してしまうことがあるのです。 このDLPFCの機能を低下させる大きな要因が「不安、恐怖」といったストレス感情であることも分かっています。つまり悲観的な感情が痛みを慢性化させているといえます。 最先端の痛みの医療 痛み治療の分野では、長引く痛みには「心理社会的要因」が大きく関与しているという考えが広まってきています。痛みの回復にはその人の生活、社会環境、物事の捉え方や考え方の癖、日常のストレスなどが大きな影響を及ぼします。 日本ではあまり普及していませんが、認知行動療法や心理療法は最先端の痛みを和らげる治療として世界標準となってきています。 多くの人を悩ませ社会的問題となっている慢性痛を減らしていくために、痛みを「体と心の問題」として捉えた総合的なアプローチが必要とされています。しかし日本にはこのような診療体制がないため新しい医療システム作りが必要と考えられています。 さいごに いかがでしたでしょうか。 慢性的な痛みが続く理由を、研究結果とともに、細かく説明させていただきました。 慢性的な痛みは悲観的な感情が生み出しているという事実に驚いた方がいるのではないでしょうか。 慢性痛にお悩みに方はぜひこの事実を頭の片隅に入れておいてくださいね。 筆者プロフィール 青葉 秀樹 あおふじ整骨院院長 柔道整復師 EFT-Japan プラクティショナー SAJ スキー準指導員 山形県遊佐町生まれ。あおふじ整骨院院長 脳、神経の働きに注目し、痛みや不調を繰り返さない激しい運動でも痛まない健康な体づくりをサポート。身体的問題にも感情が関係していることが多いことから、心と体の両面に目を向けた施術を行っている。
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