セカンドオピニオンの本当の活用法<前半>【患者力6】
皆様こんにちは、u-balからだ塾の上原です。
「本当にこの診断で良いのかな?」
「この治療法、他の先生でも同じようなことをするのかな」
こんな時、「他の先生の意見も聞いてみたい」と不安に思うことがあるかもしれません。
ご存知のことも多いと思いますが、かつては治療側に失礼にあたることから、なかなか難しいこととされてきました。
今でもそのような対応をされる医療現場もありますが、「むしろ重要」「全く問題ない」と言うのが時代の流れなってきており、今ではセカンドオピニオンが世間に浸透しつつあります。
そこで、『治療家を本気にさせるための「患者力」養成シリーズ』、第6回目は「セカンドオピニオン」<前半>についてお話します。
整形外科で変形性股関節症と判断された患者さん
私の患者様で、先日激しい股関節の痛みを訴えられるお客様(Aさん)がいらっしゃいました。
1か月ほど前、庭の草むしりをした直後から激痛が走ったとのことです。
お話をお聞き致しますと、草むしり自体は日頃から行っていたらしいのですが、その日はたまたま腰痛予防のために滅多につけない骨盤ベルトをきつく締めた状態でやったとのことです。
不安になったAさんは整形外科に行き、診てもらう事にしました。そしてお医者さんによる診断名は、老化による『変形性股関節症』。加齢とともに大腿骨や骨盤の変形が起きて痛みを引き起こす病気です。
鎮痛剤の服用とともに安静をすすめられたAさんですが、その後一か月にわたり良くなるどころか次第に立っていることもままならなくなりました。
そしてその後Aさんの娘さんのご紹介により、埼玉県から東京の私の診療所にわざわざお越しになったのです。
セカンドオピニオンを求めて他の整形外科を受診してもらうことに
老化による変形はある日突然おこるものではなく、年月を通して徐々に起こるものです。
今回は草むしりをきっかけに激痛に発展しているわけですし、仮に変形があったとしても、それが原因かどうか、私は疑問に思いました。
極端な骨盤の歪みがあったので、試しに調整してみました。施術直後はかなり軽くなったらしく、姿勢もよくなりました。
ご本人は喜んでおり、「骨盤だったんですね~」とおっしゃっていたのですが、私自身はまだ疑問でした。骨盤の歪みがはたしてあそこまでの激痛を前兆もなく引き起こすものか・・。
案の定、娘さんの話によると翌日からは痛みが再現し、歩行が難しくなったようです。
そこで、私は紹介状をしたため、近辺の埼玉の2つの大きな病院の股関節専門外来を受診して頂きました。しかし、診断はやはり初めの病院と同じ「変形性股関節症」でした。
再び私の診療所を訪れたAさんは憔悴しきっており、この先歩けなくなるのではないかと不安になっておりました。
私はとりあえず再度骨盤を調整したところ、やはり症状は楽になり、歩きは改善されました。そしてAさんはこの先これを繰り返すのが一番良いと思う、とおっしゃいました。
しかし、おそらくまた翌日には再発することは予測できるわけで、これが根本治療にはならないことは、治療家のカンとしてなんとなく気づいていました。
4件目の病院で驚きの診断名を下される
そこで、比較的Aさんの自宅に近い私の信用できる同僚に声をかけ、診てもらう事にいたしました。
そうしたところ、彼も私と同意見で、症状からして痛みの原因が変形股関節症とは考えにくい、とのことでした。
彼としても骨盤のゆがみは気になるとのことで彼なりに調整をかけたところ、これもまた私の時と同様、改善→再発と言う結果でした。
彼と相談して、もう一度だけ病院での検査をすることにいたしました。Aさんはもう医者にはかかりたくない、と医療への不信感はあらわでしたが、今回は同僚の彼が修行時代お世話になった整形外科で、信用できる先生とのことで、これが最後の頼みの綱です。
診断の結果、思わぬ病名がつきました。
『急速破壊型股関節症(Rapidly Destructive Coxarthropathy;RDC)』
多くは6か月~1年以内という比較的短期間の経過で股関節が急速に破壊される原因不明の疾患で、欧米では全股関節症の5~10%程度と、比較的珍しい疾患です。
治療家としてお恥ずかしい話ですが、私も彼もこの疾患のことは聞いたこともありませんでした。ゆえにもちろん疑う事も出来ず、骨盤の異常に手を出すことで精いっぱいとなってしまったわけです。
が、ようやく正しい診断ができる先生に巡り合え、結果的に改善への道のりが開けたことは、私たちとしても一安心、非常に嬉しい出来事となりました。
あとから、手術の可能性を含んで治療をしていくことと、お礼のお手紙を頂くことができました。
治療する側を選ぶこと・別の専門家の意見を聞くことは必要
このように、セカンドオピニオンって大事・・どころではく、「必要不可欠」な事例があったりします。
このコラムでは何回も言いますが、治療する側も人間です。
分野によって得意不得意はもちろん、どれだけ検査技術が発達してもそれを元に下される判断は人間がするものです。
従って、治療する側を選ぶことや、時には別の専門家の意見を聞くことはむしろ自然なことであり、先にも申しあげたように「必要」です。
そう考えると、良い治療家とは、セカンドオピニオンを容認するだけでなく、時には自ら勧めることをする人になるのでしょうか。
いずれにしても、もし治療や診断に不安や疑問があるようなら、積極的に先生にお話しできるような環境作りが必要ですね。
後半ではそんなお話しをしたいと思います。
まとめ
「セカンドオピニオン」は大事ではなく、「必要」な時もある
『ちゃんとした治療を受けたい』
『手は抜かれたくない』『きちんと診てもらいたい』
患者側からすれば誰もが願うことですよね。
一方、治療家側から見ると、どれだけ公平に患者様に接しようと思っていても、1日何人、何十人と診ていると、知らないうちに実はお客様を選別しています。
そんな中、より先生を本気にさせ、より適切な治療を受けるための『患者力』をつける方法を、シリーズでお伝えしていきます。
【これまでのコラム】
Vol.1:
『治療院に通っても治らない・・・を防ぐためにできる、たった1つのこと』
Vol.2:
『より効果の高い施術を受けるために知っておくべきこと』
Vol.3:
『治療院で良いアドバイスをもらうのに心掛けることは1つ!自分の情報を伝えること』
Vol.4:
『骨折の手術後でしびれが続く!改善させるためある女性がとった行動とは?』
Vol.5:
『意識するのは2つだけ!腰痛や肩こりを早く治してもらうための質問力とは?』
著者:上原健志
出版社:中経出版
筆者プロフィール
上原健志
うえはら整骨院院長
セラピストの為の解剖生理学塾u-balからだ塾、
マジックハンズ・セラピストアカデミー代表
女子サッカー『INAC多摩川レオネッサ』チームトレーナー、<資格>柔道整復師、ケアマネージャー、米国NSCA認定パーソナルトレーナー、英国ITEC,CIBTAC国際ライセンス(解剖生理学)、上海中医薬大学短期研修修了(解剖学)
現場での施術はもちろん、プロ向けの指導にも尽力しており、難しい解剖生理学を現場目線で分かりやすく説明するスタイルは、プロ・アマ問わず多くの支持を受けている。
体に関する商品開発など、コラボ企画も多数。
1856